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わが街・ウリ支部

大阪・泉北支部…高齢者に憩いの場



泉北支部会館
(1階がムグンファ・ハウス)

◆「苦労した世代」に報いたいとデイサービス実施

 中央本部、各地方本部、支部とつながり、全国を網羅する組織を持つ民団。もちろん、団員の生活や権益を守るために存在する。組織の根幹となるのが、団員と直接的なかかわりを持つ支部だ。全国に300余の支部の中には、団員数千人を擁する支部から数十人の支部まで、状況は様々だ。「団員への奉仕」をモットーに工夫を凝らして団員サービスに当たり、団員からの信頼も厚い支部を紹介する。

 大阪府の南部、繊維製品で有名な泉北地区の和泉市に拠点を置く。

 支部会館は二階建て。事務所が二階にあり、一階のフロアは同胞のお年寄りを対象にした「街角デイサービス・和泉ムグンファハウス」として運営する。公的なデイサービスを実施する全国で唯一の民団支部だ。

 街角デイサービスは、大阪府が民間に委託して老人介護事業の一つ。98年5月にスタートし、泉北支部はすぐに認可申請し、和泉市で二番目、8月3日に開設した。市内には現在6カ所が開設され、府下では八十余カ所でデイサービスが行われている。

 李漢Q支団長は就任5年目。夏の暑いさなかは木陰で、冬はたき火をしながら、同胞のお年寄りたちが公園や寺でゴザを敷いてたむろしている光景を何度も見た。息子夫婦が共働きで、お年寄りがポツンと家の中に取り残されてしまう。独居老人も多い。「本当にお年寄りが行くところがない。一番苦労してきた世代なのに…」というのがデイサービスを始めたきっかけだった。

李漢Q支団長

 当初、支部に老人が集まると仕事に差し支えると言う意見もあったが、団長就任と同時に老人へのケアを打ち出した。府のデイサービス計画スタートと同時に、福祉に先進的な和泉市の協力も得て補助金を受け、支部事務所を二階に移し、一階をワンフロアにして場所を設けて開始した。

 当然、管内の独居老人23人を真っ先に登録した。次いで高齢者や介護の状況などから判断して、全部で28人が登録メンバーとなっている。施設の広さなどからこの人数が限界だった。

 デイサービスのために事務にたずさわる人など8人に二級ホームヘルパー資格を取得させた。

 利用者は1日平均9人。登録者が平均して週に2回利用できるようにした。

 午前9時。一度では迎えきれないため二度に分散して自動車で出迎え行く。ムグンファハウスでは、屈託のない世間話や孫の話題など、お年寄り同士の話に花が咲く。日がな1日、花札に興じるハルモニもいる。

 日本のデイサービスと最も違うのはウリマルでのコミュニケーションが取れることがことだ。痴呆症で日本語を忘れてしまった人だけでなく、懐かしい故郷の言葉で話すときの老人の目は輝いている。食事も、ヘルパー自慢のチゲが出されると、「おかわり」の声が相次ぐという。

一世の高齢者が楽しく
過ごすムグンファ・ハウス

 李支団長は以前、痴呆症の人を介護する日本の特別養護老人ホームを訪ねたことがある。覇気のない生きていくだけの生活。肉体労働で汗水流して同胞社会を支えてきた一世が、人生の最後になぜこんな目に合わなければならないのか。20年、30年前の民団は権益擁護、差別撤廃のために頑張ってきた。高齢化社会に入った同胞社会の中で、民団本来の助け合いの原点に立ち返って、お年寄りたちに、生きていて良かったと思われる仕事をしよう―。老人問題への取り組みの原点だった。

 団員が支部を見る目が変わってきた。団費収入もスムーズになった。会館補修費の400万円も、誰一人文句を言わずに寄付に応じてくれた。デイサービスでお年寄りに出すおやつも買ったことがない。全て団員からの差し入れでまかなえる。あるお年寄りの娘は「家庭でできない、もれているケアを民団がやってくれている」と語る。

 「家で寝たきりになるのが一番怖い。今はいい友達ができて、ムグンファハウスに足を運んでいる」と李支団長はいう。

 開設当初、軽度介護が必要な人を対象に始まったが、介護保険が実施されたことで「自立者」が対象になった。3年間後には要介護者は含められない。次には介護保険対象者を視野に入れた老人センターを設立するのが今の計画だ。

(2001.01.01 民団新聞 新年特集号)



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