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21世紀に飛び出せ!コリアン

マルチタレント
金泰希さん(30)



◆在日歴8年、夢実現へ着々

 小さい頃から女優になるのが夢だった。ソウルの演劇学校にいた時には、舞台に立ったこともある。日本に留学して日大で演劇を専攻したが、日本語での正確な表現ができないという壁にぶちあたり挫折した。

 大学2年の時にNHKラジオの「ハングル講座」のオーディションで選ばれた。講師を補佐するネイティブスピーカーとして務めるうちにテレビ講座にも出演するようになった。

 それが日本での活躍のきっかけになったのだが、大学卒業後は将来の人生設計が描けずに揺れていた。

 「私が本当にしたいことは何だったのだろう、好きな道を歩んできたといえるのだろうか」と自分に問いかけるなかで、芝居が生き甲斐だと気づいた。

 そんな時、テレビでつかこうへいのドキュメンタリーを観た。北海道で二週間の演劇セミナーを開くという。未知の土地でオーディションを受けるだけでも、自分の気持ちに踏ん切りがつくのでは、という軽いノリで応募したところ、ここでも受かった。

 つか流の芝居づくりをはじめ、芝居のことだけに没頭できる楽しさを満喫し、それが縁でつかこうへい劇団の児童教室を手伝うことになった。98年の初冬のことだ。

 その年の9月、翻訳や通訳、韓国のナレーションなどの仕事をしている頃に、CS衛星放送、KNTV(韓国総合放送)の「在日コリアンニュース」に出演が決まった。

 15分ワクで始まったニュース番組は、99年春からニューカマーのための法律相談や活躍している同胞らにスポットを当てる新コーナーを加え、今では1時間番組に拡大した。週1回の放送は丸2年を超え、通算120回を数える。

 在日歴8年で日常生活の日本語には不自由しないが、キャスターともなれば、自分の意見を正しい言葉で述べなくてはならない。

 「100回も放送すれば、もっとうまくならなくてはならないのに…」と苦笑いするが、この番組によって、在日同胞社会を知る大きなきっかけになったと喜ぶ。

 2000年の夏。念願の初舞台は、つかこうへい劇団から独立した演出家の劇団旗揚げ公演だった。芥川賞作家の目取真俊原作の『魂込め(まぶいぐみ)』で、沖縄の戦争を経験した老婆という主役。続いてつかこうへい作の『二等兵物語』では、従軍慰安婦役を演じた。

 「どちらの劇も舞台のたびに生き物のようにせりふを変えていくスタイル。緊張状態が続くが、お客さんの反応がすぐにわかるのが嬉しい」と、自分でも合格点をつける初舞台になった。その観客のなかにいた新聞社の人間の目に留まり、その社が主催した「コリア・スーパー・エキスポ2000」では、日韓シンポジウムの司会に抜擢された。さらに、今春公開の日本映画「ラッシュ」ではコミカルな韓国女性に扮した。次から次にいろんな役柄をこなすマルチタレントぶりが期待される。

(2001.01.01 民団新聞 新年特集号)



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