民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
21世紀の民族教育を見つめて

民族学校の現場から<14>



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喜怒哀楽、子どもたちと共感
張諭理(金剛学園・幼稚部)

 「アンニョンハシムニカ?」今日も元気に登園してくる子どもたち。いつものように、スクールバスから降り、階段を登って教室へ入って来ました。「楽しみやなぁ」「頑張ろうな」「どきどきするなぁ」。みんなそれぞれの思いを口にし合う、そう、今日は、一年の中で一番大きな行事、生活発表会の日です。

 春から秋にかけて、幼稚園生活で身につけたことや、経験を生かし、それぞれの子どもたちの年齢に合わせた内容の出しものを披露するのです。緊張と不安がつきまとうものの、子どもたちにとっては、大切な晴舞台の日です。

 オープニングのチャングノリでは、五歳児とはいえ、幼稚園の中では、一番のお兄さん、お姉さんである「ムグンファ班」が、年長クラスらしく、力強いリズムを聞かせてくれました。

 次に出て来たのは、年少クラスの「チンダルレ班」の子どもたちで、今回が初舞台となります。鮮やかな色合いの民族衣装をつけての花嫁行列は、立ち居振る舞いは、まだおぼつかない様子ではあっても、とにかくかわいらしい。小さな新郎、新婦のおすましポーズには、見ている人の顔も、思わずほころびました。

 3番目は、年中クラスの「チャンミ班」の出番です。物語の主人公になりきっての熱演ぶりは、見ている大人たちを圧倒するほどで、もちろんセリフも大きな声で、しっかり言えていました。客席からも拍手、拍手。その後も、鳥たちの群が美しく飛び交う様子を表現した「両班チュム」、おなじみの扇をもって優雅に舞う「プチェチュム」、と、ウリナラの香りを満喫させる舞踊や昔話をアレンジした楽しい劇、また色とりどりの衣装をつけ、クリスマスソングに合わせてのダンスは、ファッションショーさながらの華やかさでした。

 そして、いよいよ一番の見所、年長クラスの韓国語劇、「ヘニム グァ タルニム」(お日さまとお月さま)の番がやって来ました。出番を待つ舞台裏では、さっきまでふざけ合ったり、笑っていた子どもたちも、やや緊張の面持ちで、気合いも十分。自分の出番を、今か、今かと待っています。そして、いざ舞台へ上がるとさっきまでの、緊張した表情はなく、生き生きとした様子が感じられました。在日の子どもたちにとって、普段使い慣れていない母国語。しかも物語のセリフとなると、覚えるだけでも大変でしたが、幼稚園での韓国語保育での成果が表れたようで、とても上手に、そして堂々と言えていました。

 最後の締めくくり、合奏、合唱が終わると、子どもたちは、ホッとした様子で、いつものいたずらっ子の表情に戻りました。けれど、その表情からは、今までにはない、満足感や達成感が感じとられました。特に年長クラスの子どもたちにとって、今年は、幼稚園生活の締めくくりの一年間であり、一つひとつの行事が、大切な思い出となって、その思い出を胸に、卒園していくのです。

 春の遠足に始まり、夏の宿泊保育、秋の運動会、文芸祭そして今回の生活発表会と、一つ、またひとつと、行事を終えるたびに心身ともに確実に成長していく姿に、驚きを感じずにいられません。その成長を喜びつつも、やがて子どもたちが巣立っていく卒園の日を思うと、寂しさがこみあげてきます。

 これからどれだけたくさんの喜びや楽しみを子どもたちと共感しあえるでしょうか。この共感こそ、私自身をも成長させてくれるものと信じています。

(2001.02.07 民団新聞)



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