民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
21世紀の民族教育を見つめて

民族学校の現場から<15>



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3カ国語マスターの教育
金五子(金剛学園高校・英語科教頭)

 日本で生活しながら韓国語と日本語、そして英語を必修教科として勉強できる民族学校の生徒たちは、3カ国語をマスター出来るとすれば、これほど望ましい教育環境も無いだろう。

 英語圏での生活体験がわずかな英語教師が「コミュニケーションの手段」としての英語をどれほど伝受させられるだろうか、という不安を持ちつつ11年が過ぎようとしている。私立学校として不十分な環境ではあるが、韓国人の教育への熱意に後押しされながら、また天職だというひそかな自負心を支えに、試行錯誤をくり返して来た。

 幸いにも、本校でも語学教育に適当な小人数のクラス編制が組めている。能力別に分班されたクラスで、完全とは言えないまでも各生徒のレベルに合わせて能力アップへの努力が続けられている。比較的関心度の高い教科と自負しているものの、英語学習に意欲的な生徒ばかりでないのは言うまでもなく、生徒の熱意と努力を引き出しながら授業が行われなければならない。

 今年度、高校2年生が韓国及びアメリカ・ロサンゼルスへの修学旅行を実現し、少しではあるが異文化を経験し、英語を話す体験をしている。

 英語圏の話題と日常的な英語表現への関心も高まりつつある。また、来年度からネイティブ・スピーカーの授業も受けられる予定でありインターネットを通して英語の情報をリアルタイムにふれる事が可能な環境が整った。

 つまり、本校で生徒たちは英語の読む・書く・聞く・話す力を身に着けられるのである。しかも、小人数であるが故の個人指導、つまり生徒一人ひとりにあったレベルや方法の指導を受けながらである。しかし、環境は整いつつも、総合的な英語力アップには教師と生徒双方のかなりな努力が必要だろう。

 先ず、教師自身にもっと授業に専念できる環境が必要である。授業の他にも負担の多い中で、受け持つ授業時間の多さや複数科目の授業の担当が、望ましい授業の実現を厳しくしている。

 次に、教師の英語圏で行われる研修等の参加に、学校の積極的な後援が希望される。教師自身の能力アップの無いなかで生徒や学校のレベルアップは望めないからである。もちろん、自費で行く事もあり得るが個人負担だけではなかなか実現できないためである。

 また、何よりも一番緊要な問題は、在日韓国人生徒を始めとする生徒の確保である。その為にも施設の拡充や授業料の値下げ、そして教師の増員などの環境整備がなされ、より多くの生徒が確保できる良好な条件が作られなければならない。

 少ない生徒間では切磋琢磨できる環境も整わない為である。少子化の傾向にある中、生徒募集を行うには、未備な教育環境では父兄のニーズを満足させられないし、時は不況で割高な民族学校に通わせようも無い(実際は、韓国人教育も受けられるのだから割高とも言えない)。優秀な生徒を民族学校に通わせ、韓国人、または国際人としての誇りと知識を教育する為には、入学し易い条件を備えた、信頼できる学校作りが必要であろう

 この民族学校を存続させより高いレベルの授業を実現するために、その活動を支える環境の充足が如何に緊要かという事を痛感する今日この頃である。

(2001.02.07 民団新聞)



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