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在日へのメッセージ

藤原史朗(全朝教代表)



 来たる2月28日は本校(尼崎市立尼崎高校)の卒業式だ。

 今年も約320人の卒業生のうち、6人の在日コリアンの生徒らが卒業する。日系ブラジル人の生徒を含め、在日外国人の子ら7人が世に巣立つ。

 在日外国人生徒にとっての3年間の高校生活は重い。毎年2回の全校一斉の人権学習特設ホームルーム活動の場で、自分の立場を宣言し、本名の民族名で学校生活を送ったのだ。絶対少数のメンバーだが、宣言の時の悲壮感はその後の生活の中にはない。

 学内に在日外国人生徒同胞の会があり、チャンゴ演奏をはじめ、内外での様々な活動にも追われた。

 日本人生徒らの理解と関係は上級になるにつれて深まり、本名呼称がとびかう。自分を隠していた時よりも親友が多くなった。

 そして今、全員の進路が確定したわけではないが、李俊治、鄭奨隆、金裕美の生徒3人が、チョゴリでの卒業を果たそうとしている。

 これが始まったのが1982年。毎年ではないが、今回で通算十五度目。誰もがその都度、家族に、級友に、自分自身に対して、大きな決断が要った。

 94年卒の林和宏は言った。「チョゴリの卒業は社会に向けての本名宣言だ」と。かつてチョゴリに異議ありと申し立てた保護者に対して学校長は「本校人権教育の成果として身につけている」と説明した。

 98年に特色ある学校づくりの一環としてハングル、中国語の選択科目が設置され、2年後、同胞の鄭奈美教諭(英語・ハングル)が誕生した。

 式後のチョゴリの生徒を囲む生徒らの輪。多文化共生を匂わせる美しい花。去年に引き続き、韓国舞踊家の呂英華先生があつらえのチョゴリを贈呈してくださる。たった一度、先生の指導する民族バラエティに同胞生徒や日本人生徒が加わって宝塚市民祭りに出演した。それだけの縁だというのに、唯々感謝。私も残り3年。チョゴリの卒業は消えないだろう。

(2001.02.21 民団新聞)



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