民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
第54回定期中央委員会

2001年度活動方針 基調



在日同胞社会統一の元年に
新銀行今年前半期に設立を

■今年度の展望■

 21世紀の幕が開きました。戦争と紛争のない世紀、貧富の差もなく人権、民族、性による差別のない「平和」と「人権」を尊重する世紀になることを誰もが願っています。

 去る1月、米国第43代大統領にジョージ・ブッシュ氏が就任しました。クリントン前政権とは違い、中国をパートナーではなく牽制あるいは警戒対象として見るブッシュ政権は、北韓の金正日政権も独裁政権として規定し、核とミサイル問題に対しても厳正なる解決を要求しています。

 金大中大統領は、新年辞と国政演説を通じて、昨年6月15日の画期的な南北首脳会談の歴史的成果を土台に、北韓に対し平和、包容政策を一貫して推進していくとの決意を表明しています。

 3月初め、金大中大統領の訪米、韓・米首脳会談を通じ韓・米が韓半島政策で共同歩調をとるものと思います。

 北韓の金正日国防委員長は、去る1月中旬に中国を訪問して、特に上海市を中心に中国の開放経済の目覚ましい発展を直接見聞し、北も開放経済への方向を固めたようです。また、昨年6月の南北首脳会談で約束した韓国答礼訪問は履行するとの態度にも変化がないようです。

 今年前半に実現する金正日国防委員長のソウル訪問を契機に韓半島の安全保障問題が解決し、名実ともに対立と葛藤を克服し平和定着が成し遂げるよう期待する次第です。この土台の上で和解と協力を制度化し、南北関係に新しい地平が開かれることを願わずにいられません。

 21世紀を迎えましたが、日本社会は明るい展望を見い出せません。12年目に突入する長期不況と引き続く政治混乱の中で明確な方向が定まらず、混迷を重ねています。

 このような状況の中で、一部政治家たちが保守性向をおびた復古的なナショナリズムに回帰する傾向を見せています。

 しかも地方参政権問題を取り巻く国際化と民主化時代に逆行する国民主権論を楯に永住外国人の人権を無視する傾向は、我々としては到底黙過することができません。

 さらに、教科書問題を中心に一部の学者らがアジア各民族に多大な不幸と犠牲を招いた明らかに侵略的な太平洋戦争(第2次世界大戦)を、あたかもアジア諸民族の植民地解放戦争であったかのように歴史的な史実を歪曲しています。

 このような傾向は、悲惨な在日同胞の歴史に照らしてみても容認することはできません。

 これらは当然、日本が20世紀中に克服すべきことであったにもかかわらず、21世紀まで持ち込んだことは、日本にとっても不幸なことといえます。

 我々は、在日同胞として、日本がアジア諸民族とより開放的な指導力を発揮し、「共栄」を指向する国になって貰いたいと思います。また、日本社会内においても外国人と共栄・共生する開かれた社会になるように、日本社会の動向を鋭意注視しつつ、良識ある日本人とともに行動していかなければなりません。

 我が同胞社会は、日本経済の長期不況と金融改革の遅延等による信用組合の破綻をもたらし、経済活動に大きな混乱を招いています。

 しかも同胞社会は、民団、総連とも3、4世の時代に入り日本社会の動向につれ帰化者が年々増えています。このような状況にも拘わらず分裂した同胞社会は団結した力でこれに能動的に対処できていません。

 本団は朝鮮総連に対して一日も早い対話を通じて、21世紀の早い時期に在日同胞の和合と統一を成し遂げることを呼びかけています。

 朝鮮総連も55年もの長い間、議長職にいた韓徳銖氏の死亡により新たな時代を迎えるようになりました。そして来る5月に開催する第19全大会では、新しい指導体制が出現するでしょう。本団は在日同胞社会の統一を展望しながら鋭意その帰趨を注目していきます。

 以上の情勢展望のもと、本団は2001年度方針を以下のとおり定め、21世紀の条件と環境造成に全力を尽くします。


■地方参政権の獲得推進■

 20世紀中に地方参政権を獲得し、21世紀の新たな在日同胞の権利と地位を確立するために努力いたしましたが、誠に残念ながら実現しませんでした。今年1月から始まった日本の第151回通常国会では継続審議案件として持ち越しています。

 日本政局の混乱等により、いつこの法案が審議し、採決するかは予測できない不透明な状況が続いています。しかしながら本団は、本通常国会会期中に法案が成立するよう全力を傾けなければなりません。

 1つ目は、早期立法化実現のために日本各政党と政府に対する要望活動を強化していかなければなりません。このためにも韓日議連関係者と親善友好団体との協力を求め、本国政府の理解・協力を要請しながら立法化のための努力を積極的に展開していかなければなりません。

 しかも、立法化に対する慎重論または反対論者に対しても持続的に意見交換、懇親会等を通じて理解と協力を求めていかなければなりません。

 2つ目は、地方議会に対する要望書の採択運動を継続強化していかなければなりません。3月地方議会に対する要望活動を積極的に展開したことによって1500自治体が我々に賛成する結果を示し、未採択県議会11個所と市議会161個所が100%採択すれば、全地方議会の50%を超えることになります。

 これは、日本人口の80%以上が地方参政権に賛成することを意味し圧倒的な日本国民の世論を呼び起こすことになります。中央と地方が力を合わせて全力を傾けなければなりません。

 3つ目は、日本の良識ある参政権理解者とともに日本社会の世論化に一層力を傾注しなければなりません。しかも必要に応じては、全国的な大衆集会と多様な陳情活動を大々的に組織し法案成立に大きな力を発揮できるようにしなければなりません。


■民族金融機関の健全育成■

 昨年末、韓信協会員である関西興銀と東京商銀の破綻は、我々同胞社会に大きな衝撃と不安、動揺をもたらしました。

 本団は破綻した信用組合の事業譲渡を受けて、既存の信用組合を救済できる健全で全同胞的な民族金融機関(銀行)の設立を早急にとの認識の下、韓信協、商工会議所と一体となって努力していく方針を立てています。

 当面して韓信協会員の現存組合の合併、統合を通じた銀行化の努力を全同胞的に支援していきながら、本国政府の指針と歩調を合わせ、資本増強運動を全団的に展開していきます。

 ともかく今年前半期には全同胞的な民族金融機関の設立を終えなければなりません。そして破綻した組合の影響によって厳しい状態にある同胞中小企業の経済活動を生き返らせ、厳しい日本の金融情勢にも耐える民族金融機関を早急に育成していかなければなりません。


■在日同胞社会の交流と対話推進■

 今年前半期に実現する、金正日国防委員長のソウル訪問を契機に、韓半島の平和体制を確立し、和解と協力の元に本格的な経済交流と人的交流が行われていくべきでしょう。

 在日同胞も韓半島の平和定着と和解、交流を促進するために先頭に立たなければなりません。我々は半世紀を超え分裂と対立を重ねてきた在日同胞社会の和合と交流に努力をしなければなりません。

 そして21世紀の早い時期に統一した同胞社会を3・4世たちに引き継がねばなりません。

 1つ目には、韓半島の平和定着と在日同胞社会の統一促進のために、今年、同胞社会全般にわたっての和合と交流事業を全団的に、そして何らの制限もなく推進していかなければなりません。

 まず、今年4月に開催する世界卓球選手権大会における南北選手団の共同応援活動をはじめ、花見(野遊会)、親睦会、ゴルフ大会、親善交流、敬老会等の共同開催を積極的に推進していかねばなりません。

 さらに朝鮮総連同胞の母国訪問をアシストし、3・4世や女性が母国を知ろうとする様々な要求を反映した多様な訪韓団も組織していきます。

 2つ目には、朝鮮総連中央本部と韓国民団中央本部との本格的な対話が行われるように根気強く努力をしていかねばなりません。実質的な同胞社会の統一のためにも総連中央と民団中央との対話は不可欠なのです。本国政府との関連、日本当局との関連等々、政治的で法的な問題を解決するために、そして同胞社会の統一を目指す里程標としていくためにも中央単位の対話を早急に行うべきなのです。

 来る5月、朝鮮総連は第19全大会を開き、新しい指導部を選出するとのことであります。本団としては、新指導部が民団との対話に積極的に応じることを期待しています。

 今年が在日同胞社会の統一の元年になるよう強く願うものです。


■2002W杯の後援事業■

 2002FIFAワールドカップまで一年余りに迫ったこの時点で、韓・日両国の共催が目指す目的達成のためにも、そして日本社会の中で共生・共栄を望む在日同胞としても、今事業は必ず成功させなければなりません。

 その間、在日同胞の様々な事情(日本の長期不況、信用組合の破綻等々)により募金活動を中心とした後援事業の本格的な展開が遅れていました。

 しかし早い時期に後援事業を積極的に推進していかなければなりません。そのためにはまず、募金目標額を10億円から5億円とし、同胞の実情にあう下方調整を行い組織募金と経済人募金を併行して、集中的な募金活動を展開していかなければなりません。

 その次は、本国と日本両国の選手支援の均衡を考慮しながら、日本内の開催地の後援事業等、当該民団と協力しながら共生に役立つ事業展開をしていかなければなりません。

 2002年W杯後援事業を通じて、本団は在日同胞として韓・日の親善強化への架橋的な役割を果たしながら、日本人社会との共存・共栄に傾注していきましょう。


■組織活性化■

 在日同胞社会の指導母体である民団組織の強化なしには21世紀の同胞社会の未来を切り拓いていくことはできません。

 まず、昨年から始まった組織基盤の調査事業を終え、団員の基本調査の結果をコンピュータに入力完了させなければなりません。意識調査の結果を踏まえ、民団組織の今後の方向に対する大衆的な討議をしていき、組織改革の基盤を造成しなければなりません。

 2つ目に、組織の基盤は支部であり、支部の活動強化なしには組織活性化を成し遂げることはできません。このような意味からも、今年は支部幹部会議と研修を強化し、全国的な組織の意思統一と行動統一を成し遂げなければなりません。

 3つ目は、組織幹部研修をより強化し、地方別研修、全国規模の研修を徹底していかなければなりません。調査を通じて自己の足下を知り、研修を通じて情勢と条件にあう行動統一をしてこそ、その組織は強化していくでしょう。21世紀初頭のいかなる環境の変化にも能動的に対処できる組織を造っていかなければなりません。


同胞ネットワーク構築

 高度情報化社会が情報技術(IT)の急速な発達で21世紀を誘導しています。日本社会の情報化、国際化が在日同胞の生活様式、事業方法、そして価値観までも大きな変革をもたらしています。

 情報の蓄積と共有化なしには在日同胞社会が情報化時代に「共同体」として存立できません。情報技術を在日同胞社会の有益なコミュニケーションの手段として活用し、21世紀に備えた新しい共同体のための「ネットワーク」を構築していかなければなりません。

 民団は半世紀以上にわたって、全国的に蓄積した情報と資産(社会的な基盤)を持っています。この基盤を有効に活用しながら時代に対応できるネットワークを造っていかなければなりません。

 21世紀委員会「IT特別部会」の提言に従い、今年を「同胞ネットワーク構築元年」とし、今後約3年間、次のような活動を展開していきます。

 まず、民団中央本部の情報化を試行していきます。

 情報基盤の整備と専門部署を設置して中央内部のネットワークを完備していきます。

 次に、組織の基本調査を元に全団員のデーターベース化を完了していきます。

 3つ目には、全国民団組織と関連機関をネットワークで連結していきます。

 このような作業を基盤に、21世紀初頭の早い時期に在日同胞社会に対する情報提供と相互交流を通じたネットワークを構築していきます。


■民族教育・文化活動とオリニジャンボリー■

 21世紀の民団は「文化民団」であり「教育民団」にならなければなりません。

 在日同胞が日本社会や国際社会で自己存在を確認し立証する上で、自己表現がなければなりません。それは教育に裏打ちされた文化活動を通じて可能となります。その意味で教育面では、新しい時代に見あった民族学校の教育強化に重点的な支援をしながら、民族的な社会教育により一層力量を傾注しなければなりません。

 今年、講座制「民族大学」の常設化とともに、新たな内容、多様な形態での講座を全国的に展開しなければなりません。

 今年8月、全国的なものとして初めて開催する「ソウル・オリニジャンボリー」を必ずや成功させ4・5世の民族教育の契機と基盤を新しく造り、21世紀の「教育民団」の新しい里程表を打ち立てていかなければなりません。

 また文化面では、半世紀の間、蓄積してきた在日同胞文化を集約していくとともに、大衆的な文化表現の「マダン」の一つである「10月のマダン」を拡充していかなければなりません。

 今年、文化民団としての変容の努力の一つとして民団中央会館自体を改築し、「文化会館」として新たにリニューアルし、表現活動のスペース、常設展示スペース、資料館等を兼ね備えた「総合文化会館」として変身させていくよう努力していきます。

 今年、21世紀の最初の年を迎えて祖国や日本社会、そして同胞社会の「20世紀の負の遺産」である分断と差別と分裂を一日も早く克服し、統一と人権と和合を成し遂げる21世紀を、我々の手で創っていかなければなりません。

 2001年度の方針を中心に全同胞が力を合わせ、事業実現に総力を傾注していきましょう。


●分科委員会●

活動方針、ほぼ原案通り通過


◆企画分科委員会(成鍾泰委員長)◆

 2001年度活動方針案のうち「基調」、予算案とも原案どおりで合意した。同分科委員会には在籍32人中25人が出席した。

 席上、各委員は2002年ワールドカップ(W杯)共催支援に向けての募金活動について活発な論議を展開した。李煕健氏の辞任にともない空席となっていた同後援会会長職に金宰淑団長が就任したことが確認された。

 また、地方参政権獲得運動では、早期実現のために「国連人権委員会の活用を検討しては」との意見が出た。


◆組織分科委員会(李信吉委員長)◆

 組織強化・活性化のための団員実態調査・在日韓国人意識調査を柱とする2001年度活動方針案を原案どおり承認した。32人中29人が出席した。

 これと関連、各委員からは、友好団員として処遇している日本国籍取得者に今後どう対処していくのか、研究する必要があるとの問題提起があった。これに対しては今後、21世紀委員会で論議、検討してもらえないかと望む声が出た。

 一方、これからの2、3世青年対策についても問題提起があり、緊急に樹立することが望まれるとの意見が目立った。


◆国際文化委員会(姜勝煕委員長)◆

 32人中27人が出席、地方参政権獲得運動をはじめとする2001年度活動方針を承認した。

 ただし、各委員からは、永住外国人に地方参政権を付与する法案に反対する議員連が勢力を伸ばす一方、特別永住者に対する「日本国籍取得要件緩和論」が台頭してきていることへの抜本的な対策を望む声が出た。

 また、2002年ワールドカップ誠金募金に関連しては「大手地方本部の負担が大きい」と、分担金比率の見直しを求める補足意見が出た。


◆民生分科委員会(金三中委員長)◆

 34人中29人が出席、民族金融機関・商工会議所助勢活動を柱とする2001年度活動方針案を原案どおり承認した。

 このうち、民族金融機関問題では、いわゆる「韓日銀行設立推進」の動きは全同胞的な金融機関の設立に混乱と分裂を招くとして、民団・韓商・韓信協が三位一体で推進している合併・統合を通じた銀行化努力にまい進していくことを再確認した。

 また、結婚相談事業では各地で「出会いの場」をできるだけ多く増やしていくことが望まれるとの補足的な意見が出た。


◆文教分科委員会(李英秀委員長)◆

 各委員は「民族教育事業は在日同胞社会の未来に直結する事業であり、危機意識を持ってこれにあたっていこう」との認識のもと、活動方針案を原案どおり承認した。在籍33人中23人が出席した。

 補足意見では、オリニ事業推進のためのマニュアル作成、および母国修学制度を推進するため「民団奨学金基金」の拡充方案を研究するようにと望む声が出た。

 また、8月にソウルで初開催されるオリニジャンボリーを成功させるための方策についても活発な意見が交わされた。


◆宣伝分科委員会(具義雄委員長)◆

 民団新聞読者を洗い直し、重複読者などを整理しながら発送費の節約を期するとの方向性自体は「妥当」と承認された。32人中24人が出席した。

 ただし、機関誌としての特殊な性格からしても、単に経費面だけを見て縮小の方向に進むことについては異論も多く出た。団員の生活に密着した記事など、さらなる紙面内容の充実こそがいま一番望まれるとの意見が大勢を占めた。

 このほか、民団新聞ホームページについては、若い世代の興味と関心を呼び起こせるよう内容面の充実を望む声が出た。

(2001.03.21 民団新聞)



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