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来年度の日本中学歴史教科書

「侵略」を「進出」に、「慰安婦」削除
日本有識者ら加害記述の後退憂慮



記者会見場で左から大江健三郎さん
三木陸子夫人
坂本義和東大名誉教授

 大学教授やノーベル賞受賞作家らで構成する日本人有識者グループが16日、衆議院第2議員会館で2002年度から日本の公立中学校で使用される歴史教科書検定申請本の近現代史に関する記述内容の是正を求める共同声明を発表、日本政府に然るべき対応を要請した。

 声明は、現在検定中の七社の教科書から「(従軍)慰安婦」「731部隊」に関する記述が皆無となり、「侵略」が「進出」に変わるなど、アジアに対する加害の記述が従来より大幅に後退していることを憂慮、「近隣諸国条項」を踏まえたうえでの歴史的事実の復活と適正化を検定審議会に強く求めている。

 この日の記者会見には声明に加わった17人の有識者のうち、坂本義和東京大学名誉教授、作家の大江健三郎さん、日本基督教団牧師の東海林勤さんら七人が出席した。

 このなかで東海林さんは「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二会長)が編集、扶桑社から発行される検定申請本について「神話と史実をごっちゃに結びつけて自国を礼賛、アジアの近隣諸国を蔑視している」と批判、日本政府のこれまでの対外的な公約に背くものと指摘した。

 同じく、作家の大江さんは、「つくる会」メンバーに代表されるナショナリズム的なイデオロギー風潮を「鎖国のメンタリティー」と呼び、これから国際社会で生きていく若い世代の前途を危うくするもので、決して好ましいものではないと強調した。

 最後に、坂本東大名誉教授は「つくる会」の教科書が「世界における日本の将来のためにも許可されないことを望む」と述べた。また、仮に検定に合格したとしても、教育委員会や現場の教師を通して不採択の声を盛り上げていくほか、独自の教科書、ないしは副読本のようなものをつくっていきたいとも述べた。


■歴史学会も反対表明

 歴史教育協議会をはじめとする歴史学・歴史教育にかかわる日本の代表的な7つの学会は13日、「新しい歴史教科書をつくる会」の編集した2002年度中学校歴史教科書申請本に反対する声明を連名で発表した。

 声明は、同教科書が(1)韓半島に対する植民地支配を正当化するなど近隣諸国との友好・親善に努める姿勢に欠ける(2)日本軍のかつての戦争行為がアジア・アフリカの諸民族の独立に大きく貢献したと一貫して叙述しながら、植民地・占領地での過酷な統治行為については触れず、バランスがとれていない(3)関東大震災や治安維持法のような歴史的重要事実にまったく触れていないーなどを挙げた。

 これらは過去の戦争に対する痛烈な反省とお詫びの念を表明した村山首相談話(1995年8月15日)以降の国際公約に背くものと結論づけている。

(2001.03.21 民団新聞)



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