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ラブレター フロム コリア



 宗教的な音楽は、時空を超えて伝聞する何かを、その歌詞の中に秘めている。

 なかでも賛美歌は、隣人から隣国へと、世界中に届けられた究極のバラードと言えるだろう。

 「バラードの皇帝」と呼ばれ、今、韓国で一番の人気を誇る男性歌手チョ・ソンモの初来日コンサートが四月一日、東京・新宿の厚生年金会館で行われた。

 中性的な魅力を持つ彼には、二つのニックネームが付けられている。ひとつは「マリア」。「聖母(韓国語では彼の名前と同じソンモと発音する)マリア」が、その名の由来である。

 コンサート前半、まさに聖母の慈愛にも似たバラードが、優しく会場を包みこむ。「ファンタジー」と称される甘くせつない歌声、たどたどしい日本語によるトークは「福音」となって胸に染み込んだ。

 ふたつ目のニックネームは「チョ・スター」。デビュー前、不安に襲われる彼に「チョは必ずスターになる」。そう信じた仲間が名付けたという。

 後半は、激しいダンスビートで、ガラリと会場の雰囲気を変えて見せる。まさに「スター」の面目躍如。観客も総立ちとなり、一体感は最高潮へと達した。

 「東京ラブレター」と銘打たれたこのコンサート。最後は代表的なヒット曲「アシナヨ(ご存じですか)」で、その幕を閉じる。「ご存じですか。どんなにあなたを愛していても、見つめることすらできず、無視しなければならない僕だったということを…」と歌われるこの曲。韓国発の素敵なバラードが、かつては「好きになることさえ許されなかった」隣国へのラブレターとして、確かに届けられた。(Z)

(2001.04.11 民団新聞)



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