民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
21世紀の民族教育を見つめて

民族学校の現場から<30>



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私の宝石箱
鄭恵旭(宝塚韓国学園・韓国語担当)

 日本に来てすでに、手の指では足りず、足の指まで動員しなければならないくらい長くなりました。中学校に通う息子が生まれる前に始めた韓国語講座が、このところ私の日本での生活の原動力になっているのです。

 毎日毎日、リスの車のように回る単純な日常で、ピリッとしたサイダーの味のような刺激を与えてくれている韓国語講座。韓国人である私よりも韓国の事情に通じていらっしゃりながら、もっと韓国を知りたいと学ぶ方、留学生と知り合ってもっと話しがしたいと韓国語を習う方、女房より杯がいいとおっしゃりながら、韓国酒場でもう少しカッコよく韓国語をこなしたいと挑戦する方、等々、理由はどうあれ各人各様の在日韓国人や日本人たちが、私の教室でともに勉強し、ともにくつろいでいます。

 私がはじめて韓国語を教えたころ、文法を中心に教えてみましたが成果が上がりませんでした。その後、会話を中心にしてみたところ、これまたたいして残るものがありませんでした。試行錯誤を繰り返しながら、私なりに勉強方法を変えました。

 仕事に追われたうえ、午後7時からはじまる授業が退屈だったり、何も頭に残らなければ、誰が苦労して韓国語を習うでしょうか?

 苦心のすえ、習う方の動機を聞いて、その動機に合わせた授業進行をはじめました。

 40名内外の方々の動機をすべて満たそうとすれば時間がたりないけれど、一週一週、韓国の風物・歴史、文化・隠語など、息づいている韓国の話とあわせて韓国語を勉強しはじめてからは、学生の数も減らず、楽しく授業をすることができるようになったのです。

 私はとても欲ばりで、民団で開催する行事あらゆる行事に、すべての人たちを積極的に参加させています。木曜日クラスと金曜日クラスの間の交流という目的もありますが、できるだけ民団行事に参加して、よりたくさんの同胞子女たちを韓国語講座に送ってほしいと願うからでもあります。

 文化祭への参加は、ほかのどんな行事よりも心血をそそいで練習します。いつも血筋を立てて、出る以上は賞をもらわければと皆さんに強調し、ノドも裂けよと歌います。けれども、私はいつも最小の努力で最大の効果をおさめていると自負したいと思います。それは、わが宝塚学園の皆さんの熱意があり、舞台に上がりさえすればみんな一生懸命になって歌ってくださるからです。

 こんな宝塚学園での生活は、何ものにも代えられない私だけの宝石箱です。

 韓国を知ってもらう小さな麦粒になって、日本の地域社会にも役立とうと、2年前から小中学校で総合学習の授業も担当しています。けがれなく澄んだ小学生の瞳の中には、差別意識などさがすのがむずかしいのに、中学生になるとだんだん距離感を感じるのは痛ましいことです。

 同時に、自分自身のルーツから目をそらし、それを知ろうとする意識すら失っている在日同胞2世・3世の教育問題が、私の心の隅にいつもわだかまっています。

 正しい歴史教育と母国語に対する関心こそ、ありのままの韓国を肯定的に受け入れる土台になるのではないでしょうか。

(2001.04.11 民団新聞)



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