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歴史教科書問題特集−3

「つくる会」教科書に危惧
民団中央、不採用を呼びかけ



 民団中央本部は4日、日本の「新しい歴史教科書をつくる会」が中心に執筆した中学歴史教科書が3日に検定に合格したことに対し「韓日関係は言うに及ばず、近隣諸国との友好関係に冷水を浴びせるものとして強い危惧を抱く」とのコメント(全文別掲)を鄭夢周文教局長名で発表した。

 同コメントは「『つくる会』の教科書全体に貫かれている復古調のナショナリズムは、基本的人権を土台に世界の平和と多民族共生をめざす21世紀には相容れるはずもなく、各地で進む国際理解教育にも逆行する」と指摘。「これまでの韓日関係改善の努力が、自国中心主義のバランスを欠いた教科書の出現で揺らぐというのは、あってはならないことである」と強調した。

 さらに「歴史の教訓に学ぶというのは、たとえそれが自民族にとって屈辱的な過去であっても、真摯に真正面から受け止め、再び愚行を繰り返さないということである」と表明。「つくる会」の教科書が教育現場で採用されないことを強く望むとともに、誤った歴史観によって日本自身が閉塞状況に陥らないよう要望した。


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自国中心主義の中学歴史教科書に対するコメント

 新しい歴史教科書をつくる会が編纂した中学歴史教科書が3日、検定を合格したと聞き、私たち在日韓国人は、韓日関係は言うに及ばず、近隣諸国との友好関係に冷水を浴びせるものとして強い危惧を抱くものである。

 「つくる会」の教科書全体に貫かれている復古調のナショナリズムは、基本的人権を土台に世界の平和と多民族共生をめざす21世紀には相容れるはずもなく、各地で進む国際理解教育にも逆行するものである。

 私たち在日韓国人は日本による韓国侵略と植民地支配の結果、日本に渡らざるをえなかった在日一世とその子孫である。不幸な歴史の生き証人としてこの日本で生活している私たちの願いは、韓日両国が過去の不幸な歴史を乗り越え、歴史の痛みを共有し、未来永劫にわたって友好善隣関係を維持することである。

 1998年に金大中大統領が日本を公式訪問して以来、韓日関係は過去のどの時代よりも良好である。金大統領は日本の大衆文化を次々に開放し、来年開催される韓日共催によるワールドカップサッカー大会を前に、国民レベルの交流も日々高まっている。昨年、訪韓した日本人が約二百五十万にも達するという事実がそれを物語っている。

 しかし、そのようなこれまでの関係改善の努力が、自国中心主義のバランスの欠いた教科書の出現で揺らぐというのは、あってはならないことである。同時に、このような教科書で学ぶ日本の子どもたちが、果たして世界の中で孤立せずに共生できるものか、不安がつきない。

 歴史は神話ではない。一つひとつの事実の積み重ねである。歴史の教訓に学ぶというのは、たとえそれが自民族にとって屈辱的な過去であっても、真摯に真正面から受けとめ、再び愚行を繰り返さないということである。私たちは「つくる会」の教科書が教育現場で採用されないことを強く望むとともに、誤った歴史観によって日本自身が閉塞状況に陥らないことを願うものである。

2001年4月4日
在日本大韓民国民団中央本部
文教局長 鄭夢周

(2001.04.11 民団新聞)



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