民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
歴史教科書問題特集−4

侵略戦争を肯定、美化
「つくる会」の歴史教科書内容



■□
拭えぬアジア蔑視
未来志向の韓日関係に逆行

 戦前に復古するかのような印象を与え、多民族、多文化共生社会を目指す流れに逆行するものと民団が批判してきた「新しい歴史教科書をつくる会」(会長・西尾幹二電気通信大教授)の2002年度版中学歴史教科書が4日、文部科学省の137カ所にわたる修正意見を取り入れて検定に合格した。当初の申請図書の何が変わり、何が変わらなかったのかを検証した。


■□
植民地支配の反省なし

 アジア太平洋戦争について検定後も「大東亜戦争」と呼んでいる。これは日本による侵略戦争の事実を否定したものといえよう。一方で「アジア解放戦争」との記述を繰り返し、先の戦争を肯定・美化している。

 アジア太平洋戦争が「アジア解放戦争」ではなかったことはこれまでの歴史研究ですでに明白。仮に「解放戦争」であったなら、日本の植民地支配下にあった韓国、台湾を真っ先に独立させていたことだろう。

 韓国併合・植民地支配への反省もなく、むしろ美化している。アヘン戦争のくだりでは、欧米列強の進出という情勢に韓国が何の対応もしなかったかのように記述。これについてはなんらの検定意見もつかなかった。結果的に日本が中国、韓国を欧米列強から守ってやったかのようだ。韓国、中国への蔑視が全体を通して感じられる。


■□
「近隣条項」あいまいに

 今回、検定にあたっては基本的に「近隣諸国条項」が適用されなかったという。文部科学省は「近隣諸国条項」について「漠とした基準でどうなおしたらいいのか分かりにくい。検定意見の背景には近隣諸国条項があるが、出版社に伝えるときには分かりやすいように全体のバランスや誤解を招く表現といった言い方をした」と話している。

 「近隣諸国条項」が適用されるようになったのは、1982年に教科書検定による侵略の事実のいんぺいに対して起こったアジア諸国からの抗議がきっかけだった。当時の文部省は、教科書検定基準に「近隣のアジア諸国との間の近現代史の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から配慮がされていること」との文言を付け加えた。

 さらに最近では1995年、村山首相談話でアジア諸国に与えた「多大の損害と苦痛」に対しお詫びと反省をした。98年の韓日共同宣言でも「両国民、特に若い世代が歴史への認識を深めることが重要」との認識で一致している。

 少なくとも「つくる会」の教科書にはこれら日本政府としての国際公約に明白に違反する内容が含まれていることから、韓国、中国をはじめとする近隣諸国からの反発は当然といえよう。

 「内政干渉」というには無理がありそうだ。


■□
採択阻止へ世論化急ぐ

 各社の見本本が出てくるのは5月10日以降となる。ここから各地での採択が決まる7月までが「全体の山場」となりそうだ。

 「つくる会」では全国で10%、十五万冊の採択を目指している。これに対して、「つくる会」の歴史・公民教科書を「あぶない教科書」と批判している市民団体「子どもと教科書全国ネット21」では「一冊たりとも学校現場で使わせない。世論をどう作れるかどうかが勝負」と見ている。

 同ネットの俵義文事務局長は「仮に10%の採択を許せば、政府だけでなく私たち日本人が批判されるだろう」と危機感を募らせている。

(2001.04.11 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ