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在日へのメッセージ

「ごう慢な日本人」生む教科書
当日森夫(時事通信元ソウル支局記者)



 わたしは大学で韓国史を学んだ。今から20年ほど前のことだ。

 韓国史を専攻に選んだのは、それほど明確な理由があってのことではない。東洋史学科の学生はほとんどが中国史を専攻するので、人とは違ったことがしてみたいという気持ちが半分。残り半分は韓国史の歴史を理解し、“近くて遠い”日韓関係の橋渡し役ができればという若者らしい―今思えば青臭い―正義感?からだったように思う。

 しかし、世の中そんなに甘くはない。中世の李朝時代に関する論文を何とかかんとかまとめたものの、特に評価されることもなく大学を卒業した。

 韓国史の勉強は中途半端なまま終わったが、そんな経験でも役立つことがあった。1994年から4年間、ソウル駐在記者として派遣されたこともそうだが、韓国人と歴史談義になったとき、わたしが韓国史を学んだというと相手の態度が違った。日本を批判しながらも、「韓国にも問題はあった」と謙虚に話してくれる人も多く、わたしの意見にも耳を傾けてくれた。

 最近、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書検定をめぐって国際的な論争が起きている。韓国や中国は「過去の侵略を合理化し、美化する内容だ」として強く反発。修正を加えながらも検定合格とした日本政府を批判した。

 わたしは教科書検定そのものに懐疑的だ。学校教育の場で画一的な歴史認識を押し付けるのはよくないと考えるからだ。子供たちが自分の頭で考えることが何より大事で、教科書や教師の役割は、子供たちの興味や関心をいかに引き出すか、にあると思う。

 そうした視点で見たとき、「作る会」の教科書は到底支持することができない。従軍慰安婦など日本に不都合な事実を覆い隠そうとする姿勢からは、隣国の歴史や国民感情に無頓着な「傲慢な日本人」しか育たないだろう。

 相手のことを知ろうとしなければ、相手も決して心を開いてはくれず、理解も生まれない。

(2001.04.11 民団新聞)



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