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「在日」の戦後補償棄却

元軍属訴訟で最高裁
日本の放置責任追認



 第二次世界大戦で重傷を負い、障害が残った旧日本軍の元軍属で在日韓国人の石成基さん(79)=横浜市保土ヶ谷区=と一審中に75歳で亡くなった陳石一さんの遺族=埼玉県東松山市=が、厚生労働相を相手取り「戦傷病者戦没者遺族等援護法」(援護法)に基づく障害年金を却下した処分の取り消しなどを求めていた訴訟で最高裁第一小法廷は5日、上告を棄却した。

 原告側は、外国籍者の障害年金支給を妨げてきた援護法付則第2項の国籍・戸籍条項が在日韓国人の元軍人軍属を不当に差別するもので、憲法14条1項に違反すると主張していた。

 これに対して、井嶋一友裁判長は、原告が援護法の適用から除外されたことについて、「これらの人々の請求権の処理は平和条約により日本国政府と朝鮮の施政当局との特別取極の主題とされたことから、上記軍人軍属に対する補償問題もまた両政府間の外交交渉によって解決されることが予定されたことに基づく」と原告側の主張を退けた。

 しかし、在日韓国人戦傷者の補償請求権については韓日請求権協定の解決対象に含まれず、何ら解決されずにきた。これについて援護法附則2項を放置してきた立法府の責任が問われたが、当時の「変動する国際情勢、国内の政治的または社会的諸事情などをも踏まえた複雑かつ高度に政策的な考慮と判断が要求されるところ」から「立法府の裁量の範囲を著しく逸脱したものとはいえない」との判断を示した。判決は5人の裁判官全員一致の意見だった。

 日本人の戦傷元軍人軍属、戦没者遺族には1952年4月30日に公布施行された援護法、および恩給法により年金や恩給が支給されているが、旧植民地出身の軍人・軍属は対象外とされてきた。原告らは日本国籍を取得して日本の戸籍法の適用を受けることで援護法の対象となることもできたがこれを拒否、韓日請求権協定締結による解決に託してきた。

 しかし、韓日協定が締結されるや日本政府は在日韓国人からの戦後補償要求の声を「完全かつ最終的に解決された」と無視、韓国政府は「日本政府に補償を要求することができる」と主張。両国政府が責任を押しつけ合う形で在日韓国人の戦後補償は宙に浮いたかっこうとなっていた。


■明確な法的解決望む

 なお、5人の裁判官のうち深澤竹久裁判官だけは、在日韓国人の戦傷元軍属と遺族に対して1時金を支給することについて「差別状態の解消に十分なものとは評価しがたい」と述べ、「人道的な見地に立脚した明確な法的解決」の必要性を訴えた。


■□
「恒久的な法的措置急げ」
民団中央本部が談話

 民団中央本部は5日、今日の最高裁棄却判決を「極めて遺憾」とする金宰淑団長名の談話を発表した。

 特に、在日韓国人戦傷元軍属が50余年経過した今日まで韓日両国政府から放置されるなど同様の立場の日本人と比べて著しい差別状態に置かれていたのにもかかわらず、何ら違憲判断を示さず、複雑かつ高度的な政治判断による立法府の裁量と位置づけたことを「司法府の最高機関としての責任放棄」と批判した。

 さらに、付言が一時金支給を根本的な解決策になりえていないと指摘したように、被害者救済のためにいま急がれるのは恒久的な法的措置だとしている。

(2001.04.11 民団新聞)



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