民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー

子どもの目を曇らせるな



 長女が小学3年生の時のこと。担任を通じて妻あてに2時間余りの授業を受け持つ話が舞い込んだ。「国語」の教科書に韓国の民話「3年峠」が採用されている関係で、多文化共生教育の一環として韓国や在日のことを紹介することになったのである。

 私も助っ人としてかり出され、韓国から日本人に嫁いで来た主婦、そして日本人主婦の4人が「先生」になった。女性はみなチマチョゴリで臨んだ。

 授業が始まった。「韓国について知っていることは」と聞けば、子どもたちは「キムチ」「焼き肉」の連呼までは元気がよかったが、その後が続かない。まだ近くて遠い国なのかと軽いショックを受けつつ、ハングルの読み方や簡単なあいさつ言葉を教えたり、「3年峠」を韓日両国語で読み聞かせたりした。

 好奇心が揺さぶられたのか、子どもたちの目がきらきらと輝き、体を乗り出してきた。「カウィ・バウィ・ボ」の韓国版ジャンケンでは、勝った子にだけチョゴリが着られるとあって女の子は勝とうと必死。勝負が決まるたびに嬌声があがる。

 2時間はあっという間に過ぎた。子どもも大人も上気していた。幼い頃から隣国の文化に触れることで、他者への偏見を持たないでほしいと願わずにいられなかった。

 この春、その子どもたちは小学5年生になった。今、その子どもたちが中学で学ぶことになる教科書をめぐり、ある種の学者や言論、出版社が結託した結果、「臭い物にふた」をする代物が、検定に合格するという事態を迎えた。歴史の事実から目をそむけて歪曲する思考停止の愚行に大人たちが躍起になっているが、日本の将来を背負い、世界の舞台に立つ子どもたちの目を曇らせてはいけない。(C)

(2001.04.18 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ