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東アジア全体視野の教科書を

韓日中の研究者が共通で出版へ



藤家礼之助氏

 韓国、日本、中国の学者、知識人らが集まり、2002年発行を目指して東アジア版共通教科書づくりに挑んでいる。3カ国それぞれの「自国史」を個別に主張しあうのではなく、「東アジア史」全体のなかで関連づけてみようという試みはかつてなかったこと。「新しい歴史教科書をつくる会」が中心となった中学歴史教科書に対するアンチテーゼとなっている。

 タイトルは仮称『東アジアの歴史』。「東アジア共通の歴史教科書として」という副題がつく予定。6月から各執筆者が原稿を持ち寄り、秋にかけて相互チエック作業に入る。遅くとも2002年には発刊にこぎつけたい意向だ。

 序論で東アジア文化圏の共通性について語る。本編は古代に相当する第一期が「東アジアの基盤」、中世ともいうべき第二期「東アジア世界の形成」、今日の東アジア世界の様々な伝統が形作られ、それらが成熟した時期とされる第三期「東アジアの伝統社会」、近現代にあたる第四期「東アジア世界の新生」の構成。終章を「国民国家を超えて」としたのは、各国に根強く残る自国中心史観に対する批判が込められている。

 東アジアの歴史を振り返ったとき、これまでは中国からの影響を大きくとらえ、中国と日本の間を媒介した韓国の存在を過小評価しがちだった。本書では中国と韓国、それ以上に韓国と日本との相互関係を重視しているのが特色。

 執筆にあたっては韓国、中国、日本の第一線の研究者10人が責任者となった。在日同胞社会からは早稲田大学文学部の李成市教授(朝鮮古代史)が第二期の分担責任者に加わっている。

 きっかけとなったのは90年代始めの歴史教科書論争。たまたま、ヨーロッパの主要12カ国の歴史家たちが互いの歴史観の相違を乗り越えて92年に統一教科書を完成させたことも刺激となった。藤家礼之助・東海大学名誉教授はアジアでも統一教科書をつくれないかと東アジア各国の学者たちに呼びかけ、96年末に「東アジア歴史教育研究会」を発足させた。以来、研究会はほぼ月に1回のペースで開いてきた。藤家名誉教授は「歴史教科書と銘打っているが、現実に採択は望みがたい。世界史の副読本、ないしは一般教養の概説書となる。韓国語と中国語でも翻訳したい」と話している。

 図版を取り入れたビジュアル本で約五百ページ。東京の岩波書店からの出版を予定している。

(2001.05.30 民団新聞)



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