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患者らの補償措置確立へ
日本政府は5月25日、ハンセン病国家賠償請求訴訟の控訴を断念すると正式に表明した。
これで「らい予防法」(1996年廃止)に基づく患者隔離政策の抜本転換を怠ったとして国の責任を厳しく指弾した熊本地裁の判決が確定し、長年にわたる闘いに決着をみた。
これに関連、小泉首相は同日、「患者、元患者が強いられてきた苦痛と苦難に対し、政府として深く反省し、率直におわびを申し上げる」と陳謝すると同時に、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を目指す姿勢を強調した。
具体策として(1)原告に限らず全国の患者、元患者を対象とした新たな補償のための立法措置(2)退所者給与金(年金)の創設、ハンセン病資料館の充実など患者らの名誉回復、福祉増進のための措置(3)患者、元患者と厚生労働省との協議の場の設置ーを改めて示した。
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在日韓国・朝鮮人 ハンセン病患者同盟の 金奉玉委員長 (多磨全生園) |
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在日同胞患者・全国13療養所220余人
「もう遅い…」いやされる歳月
「あまりにも年をとりすぎた。もう遅いんです」。
全国13カ所の国立ハンセン病療養所に入所する在日同胞元患者でつくる在日韓国・朝鮮人ハンセン病患者同盟(本部、東京・多磨全生園)の金奉玉委員長(74)は、小泉首相の控訴断念表明を歓迎しながらも力なくつぶやいた。
金委員長によれば、現在、全国の在日同胞の入所者は220人余り。平均年齢は74歳。1950年代初頭にはその数600人を数えたというから約三分の一に減ったことになる。全生園にはこのうち44人(配偶者もいれて50人余り)が入所生活を送っている。高齢のためほとんど全員が何らかの病気を抱えているのが現状。
朴守連さん(76)は心臓病のため、ニトログリセリンの錠剤を手放せないでいる。薬の副作用で記憶力が徐々に衰えていくという。朴さんは「お金はいくらあっても邪魔にならないので、補償には関心がある。それ以上に十分な医療態勢こそが望まれる。老人ボケになって徘徊しても介護してくれる人、看取ってくれる人がほしい」と話している。
金委員長も朴さんの話を受け「それに尽きる」と強調した。「もっと若くて健康だったら、外にも出てられるし、お金も必要だったでしょう。外にでられない以上は、お金ではない。園内の生活環境の改善と医療の充実に力を入れてほしい」と話している。
■ハンセン病とは
らい菌による慢性の感染症。らい菌の発見者ノルウェーのハンセン博士の名を取ってハンセン病と改められた。末梢神経がおかされる病気だが、皮膚やほかの組織に及ぶことも多い。きわめて感染力が弱く、感染しても発病するのはごく一部。WHO(世界保健機構)が1981年に提唱した多剤併用療法が確立されて以来、ハンセン病は早期発見と治療により障害を残すことなく外来治療で完治する病気となった。
(2001.05.30 民団新聞)
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