民団新聞 MINDAN
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在日へのメッセージ

「禁じられた遊び」
小林一博(東京新聞論説委員)



 韓国映画「JSA」は見応えがある。

 この題名は、板門店の「共同警備区域」の英語の略称からきている。韓国側の歩哨所に勤めるイ・スヒョク兵長は、北朝鮮側の歩哨所のオ・ギョンピル士官と思わぬアクシデントをきっかけに、顔見知りになる。やがて深夜に北の歩哨所を尋ねるようになる。お互いに部下を含めて、四人の交流が始まる。

 敵同士ではあるが、そこは若い者同士、言葉の壁もなく、お互いに友情を感じるまでになる。そして、スヒョクの除隊を目前にした最後の密会、突然北の兵士が現れ、激しい銃撃戦が展開される。中立国監督委員会の捜査が始まり、真相が明らかにされようとする過程で、いくつかの命が失われ……。友情が、テーマの一つだ。敵対する体制の間でも友情は成り立ちうる。しかし、このごく当たり前の人間の行き来、心の通じ合いも、イデオロギーや体制の対立という光を当てて見ると、利敵行為、犯罪になる。さらには、当事者が生命を失うところまで追い込まれるのである。

 また、この映画では北のギョンピルと部下を実に人間的に描いていることも見所だ。北にも同じ人間が住んでいる。

 あらためて、イデオロギーの対立がはらむ残酷さ、非人間性を感じずにはいられない。

 一年前の分断史上初めての南北首脳会談は、そうした残酷さを軽減するための出発点になるはずだった。

 しかし、いま南北関係は冷えている。体制の違いを超えて、対話・交流することの難しさばかりが目に付く。

 JSAでの交流は、当分「禁じられた遊び」であり続けそうだ。

(2001.07.11 民団新聞)



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