民団新聞 MINDAN
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地方自治体の声正しく反映を



拝啓 小泉首相殿

 最近、世の中が物騒になってきました。本団の会館の前の大通りを頻繁に、右翼の街宣車が軍歌を流しながら通り過ぎて行きます。ボリュームをあげたそれを聞いていると、まるで今が「戦前」か「戦中」のような錯覚に襲われます。また再び「戦争」を望む人たちが増えているのでしょうか。

 小泉首相殿、まもなく臨時国会が始まります。あなたの景気回復策と構造改革がどう具現化されるのか、多くの国民が注目しています。一方、半世紀以上「住民」として日本に住む在日韓国人も、熱い思いで一つの法案の成立を待っています。永住外国人が地方自治に制度的に参与できるための地方選挙権付与法案がそれです。


■住民権を正式に認知すべき時

 小泉首相はご存知ですか。今から丁度8年前の9月9日、大阪の岸和田市議会で、一つの決議がありました。同じ住民である定住外国人の人権保障確立のために地方自治体参政権を付与するよう、意見書を採択し政府に提出したことです。それ以降今日まで、1500近い自治体が同様の意見書を採択しています。私達の多くが住んでいる600余都市の75%がすでに賛同の意見書を採択しており、政府に早期の立法化を求めています。

 小泉首相、このことをどうお考えですか。これほど多くの地方自治体の声を国会の場で正しく反映し、私達に住民としての権利を付与すべく処置を取るのが民主主義ではないでしょうか。 小泉首相、貴方の周辺の反対者たちの声を鵜呑みにしないで下さい。

 私達は国政レベルの選挙権を要求してはいません。95年2月最高裁は、地方自治体レベルに限って、選挙権を永住外国人に付与しても違憲ではないとしました。永住資格を持つ外国人の住民権保障に道が開かれたのです。


■国籍で差別する時代に終止符

 小泉首相はこの最高裁の判決文を自分の目で読んだのでしょうか。日本国籍者以外を認めようとしない反対者たちは、この判決が不愉快なため受け入れられず、国民に傍論であり違憲であると虚偽の宣伝をしています。

 国際化の進展により、地方自治体レベルの参政権を永住外国人の「住民権」として認めてもよい時が来ています。地方に対して、「国籍」で差別する時代ではなくなったのです。最高裁判決からすでに6年以上が経ちました。

 法案はすでに昨年11月の国会で3会期目の審議と参考人聴取が行われ、採決の段階にまで至っています。

 小泉首相殿、貴方の党が反対で党議拘束をかけるのは賢明ではありません。これからの日本と韓国との信頼関係、またアジアとの「共生」のためにも、むしろ貴党が率先して、国際社会に対応し、外国人住民の人権に配慮したこの法案を、今国会で成立させることが何よりも望まれているのです。


(2001.09.12 民団新聞)



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