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採択権めぐり攻防か

教科書問題第2ラウンドへ



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市民団体、「学校・教師単位で」
「つくる会」側、「都道府県教委に」

 市民団体「子どもと教科書全国ネット21」は8日、東京の主婦会館プラザエフで第4回総会を開き、「新しい歴史教科書をつくる会」による歴史歪曲を許さない取り組みを強化していくとの活動方針を採択した。当面は教育委員の公選を働きかけ、学校単位での採択制度の実現と併せて採択の密室性打破を目指していく。2、4年後に向けた「つくる会」との闘争はすでに始まったといえそうだ。

 02年度用教科書採択で「つくる会」教科書は国立・市区町村立中学校で採択ゼロに終わった。それだけに、総会では、東京、愛媛の障害児学校での採択は異常だとの批判が相次いだ。

 東京と愛媛では知事自身によるあからさまな政治的な介入が目立った。石原都知事は教育長に自らの腹心を「教育分野の副知事的位置づけ」で任命、新たに任命した3人はいずれも石原知事の意をくむ教育委員だった。また、愛媛でも知事自ら「扶桑社の教科書が歴史教科書としてベストだ」と、県教育委員会が決定する前に教育長に自らの考えを伝えていた。

 このほか栃木県の下都賀地区に代表されるように僅差で不採択に終わったところでは、いずれも現場の教師が選んだ教科書がホゴにされたり、教育委員会や採択協議会も非公開になった例が多い。総会で記念公演を行った小森陽一東京大学教授も、「降りかかってきた火の粉を振り払ったが火の元は健在」と警鐘を鳴らしている。

 全国23都道府県からこの日の総会に出席した会員からは、「教育委員会の恣意的決定を許さない。教育委員の公選制を要求していくべきだ」との声や、「議員立法で学校ごとの採択を実現していこう」といった要求が出た。なかには都教委の採択に抗議して東京で抗議の集会を開くべきだとの意見もあった。

 これらは「つくる会」が03年度検定の小学校社会科を発行すると明らかにし、今回の「僅差の善戦」を根拠に4年後の採択時には中学校歴史・公民で「リベンジ」を誓っていることと無関係ではない。

 全体討論を受けてまとめに立った「子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長は、学校単位・教師単位で採択ができる制度の実現を目指すとし、「つくる会」がもくろんでいるとされる都道府県教委への採択権限の集中を強く牽制した。

 また、教育委員の選任にも関心を高め、子どもや学校、教育・教科書について憲法・教育基本法を尊重する教育委員が選ばれるような働きかけを呼びかけた。

 「つくる会」が03年度の小学校社会科の検定を目指すとすれば、執筆は秋から。教科書問題は第2ラウンドに入ったようだ。


(2001.09.12 民団新聞)



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