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米同時多発テロ・韓国主要紙の論調



 米国ニューヨークの世界貿易センタービルとワシントンの米国防総省などを狙った同時多発テロ(11日)は、その規模と凶悪さで世界中に大きな衝撃を与えた。米同時多発テロに関する韓国主要紙の社説(13日付)要旨は次の通り。


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テロという名の戦争…朝鮮日報
韓国経済・安保にも大影響


 今回の事件は韓国の経済と安保、社会全般にも大きな影響を及ぼさざるを得ない。第4四半期には微々たるものではあるが回復期に入ることが予想されていた米国経済が、当分間さらに低迷することは確かだ。世界経済も同伴沈滞を加速すると見られる。

 さらには米国の報復目標が中東に向かうならば、石油価格の急騰も必然となる。従って新しい輸出市場の開拓と内需の振作をはじめとした長・短期の自助策を財界と政府がともに講じなければならない。また、今回のテロ事態はテロ支援国という汚名を抱えている北韓との関係改善に大きな障害になろうし、従って米・北韓関係の改善と連係された南北関係にも連鎖的な波及効果を及ぼさざるを得ない。

 それに伴う韓半島情勢の変化に対する対応と安保対策は最大限冷静かつ科学的でなければならない。

 米国心臓部のテロ事件は決して「対岸の火事」ではない。すべてのことが不確かになったポスト冷戦時代に、われわれも、いつどのような形の危険に晒されるかわからない。ことによると未来の「第3次世界大戦」は、国と国の在来式正規戦争ではなく、予測できない少数の相手から飛んでくる物理的、生化学的、サイバー的、そして最悪のケースは小規模の核によるテロとの戦争となるかもしれない。

 このような状況の中で政府が必ずすべきことは、そのすべての場合に備えた対応マニュアルを準備することだ。事が起きてから非常事態であることを宣布し、「さあ、これから何をどうしようか?」というやり方ではならぬ。それぞれの状況に伴う軍事的対応、友邦国とのチャンネル稼働、有事時に自動的に実践に移すことのできるあらゆる対備策を、準備しておかなければならない。 (朝鮮日報)

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全世界が反テロに立たねば…東亜日報
人類共通の敵に共同対処を

 今回のテロは、その手口がこれまでのテロの慣行とは比べものにならぬほど無謀で大胆だった。

 世界中が今回のテロリストらの蛮行を目の当たりにした通り、テロはもはや特定国家や集団に対する犯罪ではないのだ。どの国もその対象になり得る反人倫的犯罪である。テロリストは、冷戦体制の崩壊後生じた力の空間に、新たな「悪の勢力」として根を下ろしている。もちろん、今回のテロも直接的な動機は「力の外交」を掲げ、国際舞台に登場した米国のブッシュ政権に対する反感と憎悪にあるものと推測される。しかしながら、全世界に衝撃を与ようとしたテロリストらの綿密な準備と意図がありありとみられる。

 一瞬のうちに惨く崩れ落ちる世界貿易センタービルを見ながら、炎上する国防総省の庁舎を見ながら、血を流して右往左往する市民を見ながら、真珠湾攻撃を受けた時よりもさらに大きなダメージを受けたと怒れる米国民の心情は、十分過ぎるほど理解できる。どんな方法を使っても、テロリストを最後まで追い詰めて報復するという米国の決意は、極めて当然と思われる。

 しかし、テロリストをより効果的に割出して應懲するためには、冷徹に世界中の知恵を集めなければならない。テロリストは、いまや21世紀における人類共同の敵である。憎悪と怒りだけでは、問題は解決しない。テロの背後勢力が明らかになった場合、くい止められない暴力の悪循環が続けられる可能性も高い。国際社会が互いに緊密に協力して首謀者を探し、二度とこのようなテロリストが存在できないよう、ともに対処できる道を見つけなければならない。 (東亜日報)


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MD計画の妥当性再検討も…中央日報
背後、あくまで解明を

 われわれは「血の火曜日」をテロリズムに対する文明社会の宣戦布告日として記憶するだろう。

 今回の事態からわかるように、テロはある一国だけの問題ではなく、一国だけの努力で解決できるものでもない。世界はテロ根絶に向けた国際的連帯を強化し、有機的かつ効果的な共助体制を構築しなければならない。「ならず者国家」のミサイル攻撃による危険を想定したブッシュ政権のミサイル防衛(MD)計画の妥当性もこの機会に再検討されるべきだ。

 世界最強を誇る米国の防衛網がこのように虚しくも破られたのは、ミサイルや核のためではなく、わずか数人のテロ犯が所持していた凶器によるものであったという事実に米国は留意すべきだ。テロ防止は、国際社会の協調なしには不可能だ。ブッシュ政権が米国の単独行動主義的外交路線に対する国際社会の不満に留意しなければならない理由の一つがここにある。

 われわれも何度もテロによって被害を受けた骨身にしみる傷を持っている。テロ防止の重要性はいくら強調しても、行き過ぎることはない。特に、来年のサッカーワールドカップ(W杯)を控えてテロ防止策に万全を期さなければならない。

 今回の惨事が南北対話や北・米関係に及ぼす波長も懸念せざるを得ない。米国は北韓をイラン、イラクなどとともに「テロ支援国」と分類している。ミサイルと核問題などで今後米国がさらに徹底した確認と検証を北韓に要求する可能性があり、そうなれば北・米対話がさらに難しくなる。

 政府は「9・11大惨事」が韓半島の緊張緩和と和解気流に否定的な影響を及ぼす可能性を警戒しなければならない。太陽(包容)政策の基本路線は維持すべきだが、「太陽」ゆえにおろそかになり得る韓国の国防・安保姿勢を再検討する機会とすべきだ。 (中央日報)


(2001.09.19 民団新聞)



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