民団新聞 MINDAN
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ハラボジの慰問続けて5年

和歌山韓国教育院・朴院長夫妻



同胞のお年寄りを慰問する
民団と婦人会の役員ら

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老人ホーム入居の同胞を毎月訪問
肉親再会の橋渡しも

 【和歌山】同胞のお年寄り3人が入居している和歌山市にある福祉施設「白菊寮」(住岡道夫寮長・77人入居)―。和歌山韓国教育院に着任して以来5年間、朴貴善院長と夫人の洪性天さんは人知れず毎月のように慰問を続けてきた。だけでなく音信不通となった本国の親族を探し当てて再会の面倒を見てきた。身よりがいない、会いに来られない状況の中で寂しい思いをしている彼らにとって、夫妻のあたたかい言葉や世話は、今や生きる喜びの糧となっている。

 9月27日にも慰問することを聞いた婦人会和歌山本部(李蓮玉会長)と民団和歌山本部(崔博団長)の李済雄事務局長らも、朴院長夫妻と同行した。

 同胞のお年寄りは魯金石さん(84)、李亨徹さん(79)、韓奉洙さん(82)の3人。当日、一行6人の突然の訪問にやや驚いた様子の魯ハラボジは「今日は敬老の日でも父の日でもないのに、おかしいなぁ。何の日?」と目を丸くした。


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来年離任婦人会にバトンタッチ

 初めて会った頃は、嬉しさのあまり涙を流すばかりで、ほとんど口も開かず、やや痴呆の症候も見られたという。今ではすっかり直り冗談まで飛びだすようになった。

 朴院長が同寮慰問するきっかけとなったのは、着任した5年前にハングル講座で勉強していた市役所に勤務する日本人生徒に「日本の施設にももしかして同胞がいるのでは。調べてほしい」と依頼したことから。3人の入所を知って足を運んだのが最初だった。

 ある日、洪夫人が魯ハラボジの私物の中から、軽度の痴呆症のために手紙のやりとりもできずに音信が途絶えていた娘さんからの古い手紙の束を発見した。差し出し場所の仁川市に国際電話をしたところ、健在であることが判明。3年前に来日し、約60年ぶりの再会を果たした。すべての手配を整えた夫妻の喜びもひとしおだった。

 また16歳の時に徴用で北海道の炭鉱に連れてこられたという李ハラボジは、再会には至っていないものの朴院長夫妻の尽力で、本国に妹が健在でいることが判明した。もうひとりの韓ハラボジは最初、タオルを投げたり近づけさせなかったり、と警戒心をあらわにしていたが、今ではすっかり夫妻の訪問を喜んで迎えているという。


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コーラスのプレゼントも

 こうした献身的な奉仕活動を伝え聞いた同婦人会は、日常生活用品を自費で持っていったり、体を拭いてやったりする洪夫人に心うたれ、一昨年から定期的に訪問するようになった。

 厳正子副会長は「在日のお年寄りだけでなく他の方々にもささやかな贈り物に加え、コーラスなど歌のプレゼントも考えている」と話す。

 来年2月には帰国するという朴院長は「徴用で連れてこられたハラボジたちは、どれだけ苦労したかはかり知れず、本当に辛かったでしょう。私にとって毎日が敬老の日で、自分の親に対する気持ちで接しただけ。婦人会の方々が受けついでくれることはとてもうれしい」と目をうるませていた。

(2001.10.03 民団新聞)



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