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慎武宏の韓国サッカーレポート

<アジアの虎の鼓動>
最終局面迎えたW杯準備



9月のナイジェリア戦で
得点を決めるなど、
成長ぶりを見せた李天守

■□
韓国代表強化着々と…改革には苦痛がつきもの
強化の方向性に間違いはない

■納期きっちり守る

 いよいよW杯がやって来る。8月、9月と韓国各地を歩き回ってきたが、行く先々で高まるばかりのW杯ムードを目にした。その準備は今、最終局面を迎えていると言っても過言ではないようだ。

 例えば開催10都市のスタジアム建設状況である。日本と同じく10都市でW杯を開催する韓国のスタジアムはすべて新築だが、すでにオープンした蔚山、大邱、水原に続き、9月には大田と釜山のスタジアムが完成。今後は全州、光州、西帰浦、仁川が完成する予定で、11月には韓国のメイン会場となるソウルW杯スタジアムがこけら落としとなる。

 97年末に突如襲った経済不況で、一時は間に合わないのではないかと心配されたが、キッチリ納期を合わせてくるところはさすがだ。そこに、韓国のW杯に対する意気込みを感じずにはいられなかった。

 ボランティアへの関心も高い。日本ではボランティアの定数確保に四苦八苦しているそうだが、韓国では1万6000人の募集に対して6万5000人の応募があった。ちなみにその中には、35カ国519人の在外韓国人の申請も含まれていたという。まさに韓民族の団結力の強さを実感するかぎりだったが、入念な選考を経て選ばれたボランティアはこの11月に結団式も行なうとのこと。来年5月まで教育・訓練を受ける彼らが、大会を支える大きな力になってくれることは間違いないだろう。

 もちろん、安全対策も万全を期す覚悟だ。韓国W杯組織委員会は今年4月に関係各庁の総力を結集させた『安全対策統制本部』を立ち上げており、フーリガン対策に全力を傾けている。米国同時テロに対しても即座に対応し、無事故W杯≠目指して気を引き締めていた。韓国のW杯準備に抜かりはなさそうだった。


■「監督非難」あるが

 しかし、その一方で気掛かりなこともあった。KOWOC関係者から一般市民のほとんどが、代表チームの状況に頭を悩まさせていたのだ。

 就任時は絶大な人気を集めたフース・ヒディンク監督には非難の声が集まっており、「フィリップ・トルシエ監督の指揮下で着実に結果を残している日本がうらやましい」との声まで噴出している有り様なのだ。

 なぜ、ヒディンク人気が急落しているのか。それは韓国代表のここ最近の成績が起因している。

 8月のチェコ戦ではまたしても0対5の大敗を喫し、9月に行われたナイジェリア代表との2連戦では1勝1分けの成績こそ収めたものの、その内容はお世辞にも素晴らしいと言えるものではなかった。攻撃はちぐはぐでセットプレーにもっと工夫が必要だと感じた。収穫と言えば、その攻撃力が光った李天秀と起用のメドが立ったこと、それによって崔成勇のボランチでの起用も可能になり、コマ不足とされてきた中盤の選手層がやや厚くなったくらい。

 復活ゴールを決めた李東国の活躍といった好材料もあったが、全般的にイライラが募る試合で、一部マスコミが「ヒディンクは何をやってるんだ。W杯が目前に迫っているというのに、目に見える進歩がない」と憤るのも仕方がないものだった。

 とはいえ、トルシエ・ジャパンがそうであったように、チームの骨格作りには時間もかかるもの。それだけに目先の結果に一喜一憂するのは避けなければならない。その練習をつぶさに見てきたが、ヒディンクは守備システムの構築に全力を傾けていたし、選手たちの姿勢にも力が入っていた。大きな前進はないが、後退はしていないのだ。


■「強い決意」衰えず

 それに時間が少ないことは、監督と選手がもっとも自覚している。その上で誰もが「要はW杯のときにチームをピークに持っていけばいい」と語ったほど、悲壮感はない。ヒディンク体制発足時、誰もが「限られた時間をムダにはしない」と語っていたが、その強い決意は今も衰えてはいない。

 確かに結果が伴わないのは心配だ。勝ちながら経験を積めるのが理想でもある。しかし、改革には苦痛が伴うものだし、弱小相手に勝利しても本物の自信は得られない。そういう意味では、10月の集中合宿を経て、11月には欧州列強との連戦に挑むという韓国代表の強化の方向性に間違いはない。

 W杯の準備と同様に、ヒディンク・コリアの強化も着々と進んでいる。洪明甫、柳想鐵ら主力を外し、あえて若手主体のメンバーで挑んだナイジェリア戦を見て、改めてそう思った。

(スポーツライター)

(2001.10.03 民団新聞)



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