民団新聞 MINDAN
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永住外国人への地方参政権

日本各界の意見を聞く
福島 瑞穂さん(社民党参議院議員)



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多元社会の構築へ
「地方政治参画」立法化を


◆憲法調査会の委員として思うことは?

 参考人や国会議員の人たちのなかには、日本人=日本民族=日本国籍を持っている人=日本の文化、伝統を持っている人と思っている人がいる。そして、日本国憲法は日本の文化、伝統が書いていないからおかしいと言う人もいる。

 文化そのものが時代や地方によって多義的であるのに、日本人という出発点から文化、伝統までを無理矢理イコールでくくろうとしたり、その枠組みを強化しようとする。日本は北方系から南方系まで混在している多様な民族で構成されている。多くの永住外国人が住んでいるが、これまで一票がないために意思決定の場に関係がなく、無視されてきた。地方議会でも外国人のことを考えなくてもよかった。地域の中で住人としてずっと一緒に暮らしてきて共生が可能なのに、排除している。全然意見を聞かなくてもいい人たちが存在するということは、逆にその地域社会が不安定にならないのだろうか。


◆人種差別撤廃会議に参加されましたね。

 8月末に南アフリカのダーバンで開かれた国連の「第1回人種差別撤廃会議」では、奴隷制の補償なども話し合われた。ムベキ大統領自らレイシズム(人種差別)やセクシズム(性差別)のほかに、人種差別に関連した非寛容の問題にも言及した。違うこと、違う者への非寛容が日本の弱点だ。先日、公安調査庁が各自治体から「在日」の情報を入手していたことが報道された。役所の人を呼びヒアリングも行ったが、何も明らかにしなかった。「在日」をいまだに犯罪者予備軍のように管理の対象とみなしていて、何の疑問も持たずに情報を提供していたこと自体が人権感覚の欠如だ。


◆今後の日本のあり方については?

 高度経済成長に自信がある時には、「政治は三流かもしれないが、経済は一流だ」「ジャパン・アズ・ナンバーワンだ」と胸を張っていた。

 ところが、経済が駄目になり、いろいろな既得権益が壊れ始めて自信がなくなってくると国家主義的な形で統合していこうという動きが大きくなる。そういう時にこそ、女性も高齢者も外国人ももっと働くことができる社会、いろんな文化を大事にし、一人ひとりが地に足をつけて、みんなが共に生きられる身の丈の社会にすべきだ。元気を引き出せる政策が取られればいいと思う。

 選択的夫婦別姓の問題にしても、反対する人たちはそれで社会が壊れるかのように思っている。変化に対して怖がっている。「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書は、夫婦同姓が家族の絆を深めると言う。

 差別主義者は自分より下と思っている女性や外国人が、権利を主張し始めると既得権が脅かされると思って攻撃を始める。日本人になれと帰化を持ち出す。帰化が問題なのは、「在日」の歴史的な経緯や外国人問題がないかのように隠されてしまうからだ。いろんな人がいて当たり前、違う価値観を受け入れる、より多元的で寛容な社会をつくるほうが、長い目で見て日本は強くなると思う。そのためにも地方参政権の法制化が急がれる。


□■プロフィル■□

福島瑞穂(ふくしま・みずほ)

1955年、宮崎県出身。東京大学法学部卒業。87年、弁護士登録。夫婦別姓選択制、婚外子差別、外国人差別、セクハラなどに取り組む。日弁連両性の平等に関する委員会委員、川崎市男女平等推進協議会会長などを歴任。98年、社民党の参議院議員に当選。著書に『福島瑞穂の新世紀対談』『使いこなそう!ドメスティック・バイオレンス防止法』『「憲法大好き」宣言』など多数がある。

(2001.10.17 民団新聞)



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