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厚労省・在外被爆者への援護法適用で「検討会」

年内にも結論、答申へ



「検討会」で意見を述べる
3人の在外被爆者(厚生労働省で)

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在韓・米・ブラジルからの参考人
救済の平等訴える

 在韓被爆者に被爆者援護法上の健康管理手当の支給を認めた大阪地裁判決を受けて7月に発足した日本厚生労働省の「在外被爆者に関する検討会」(会長、森亘日本医学会会長)が、大詰めを迎えている。4日の第3回検討会では在韓、在米、在ブラジルの被爆者を参考人として呼び意見聴取した。年内にも検討会としての結論を出し、坂口力厚生労働相に答申する。

 同検討会は坂口力厚生労働相の肝入りで8月に設置された。大阪地裁での敗訴判決を受け、被爆者援護法改正などについて意見を聞くのが目的。8月から月1回のペースで会合を重ねてきた。4日の第3回検討会には在韓、在米、在ブラジルの被爆者3人を参考人として招いた。

 まず、在韓被爆者の崔日出さん(社団法人韓国原爆被害者協会元会長)が意見陳述に立ち、「大阪地裁の判決を尊重、在外被爆者にも日本国内の被爆者と同様に援護法の適用を」と訴えた。さらに、崔さんは在韓被爆者が日本の植民地支配と侵略戦争によってもたらされたものであると指摘、亡くなった被爆1世への補償にも誠意を尽くすよう求めた。

 また、米国原爆被爆者協会名誉会長の倉本寛司さんと在ブラジル原爆被爆者協会の森田隆会長も「どこに居住しようが、被爆者は皆同じ。被爆者救済は平等に」と要望した。

 在外被爆者数は約5000人とされる。数的には在韓被爆者が最も多く、同協会加入者だけでも2200人を数える。ただし、被爆者でありながら名乗りでない人も多く、正確な実数は不明。これは他の在外被爆者も例外ではなく、アメリカなどでは被爆者であれば保険の掛け金が高くなることから被爆者であること自体をを隠しているという。

 次回の検討会は11月8日、午後3時から。


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明文規定なく排除
根拠は局長通達のみ

 被爆者援護法を在外被爆者にも適用拡大すれば、空襲など一般の戦争被害者やアジアの戦後補償問題にも波及する恐れが出てくる。厚生労働省としては援護法が国家補償に結びつくのはなんとか避けたいところ。このため、厚生労働省は「援護法は日本国内のみで効力を発揮する」とした属地主義に徹してきた。

 しかし、その根拠としては74年の厚生省公衆衛生局長通達があるのみ。被爆者援護法に在外者を排除する明文規定があるわけではない。「一度、被爆者であると認定されたならば、地球上どこにいても被爆者が被爆者でなくなるわけはない」との在韓被爆者、郭貴勲さんの素朴な訴えが大阪地裁で認められたのも当然といえよう。

 大阪地裁判決は、人道目的の立法という被爆者援護法の原点に立ち返って被告、国側の主張をことごとく退けた。年内には長崎地裁に同様の訴えをしている在韓被爆者、李康寧さんに対する判決が出る。李さんに対しても大阪地裁同様の判断が示されれば、厚生労働省としても被爆者援護法の見直しを迫られるのは必至。年内ともいわれる「検討会」の結論とあわせて注目していきたい。

(2001.10.17 民団新聞)



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