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永住外国への地方参政権

日本各界に意見を聞く
宮崎 繁樹さん
(人権教センター理事長)



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住民本位の自治を…地方政治への参画は権利

◆地方参政権をどうご覧になりますか?

 20世紀は主権国家の時代だったが、人権の世紀と言われる21世紀は、個人の人権を中心に考える時代だ。

 特に、ヨーロッパでは現在では国境の壁がなくなり、国と国との間を自由に往来できるようになった。住みたい所に住み、国境を越えて就きたい仕事に従事することができる。

 このような時代には自分の住んでいる地域で住民が意見を述べることは、当然の要望であり、政治的な権利だと思われる。永住外国人が生活の基盤がある地域の政治、行政に対して関心を持ち、発言していくことは世界的な趨勢にかなっている。自分の生活に影響のあることに対して、発言力を持つということは当然のことだ。

 地方自治体は主に住民の福祉を中心にして行政を進めていくわけだから、国民だけではなく、地域に住む人の意見を汲み上げていくために地方参政権を認めることは決しておかしくない。

 国際的にみても、北欧を中心に定住外国人に地方参政権を認めようという傾向になっている。外国人に一切の地方選挙権を認めないという考え方は、少し頑なな態度だと言えるのではないか。


◆日本の人権意識と「帰化」を迫る声については?

 戦前に比べれば、かなり人権意識は高まったと言えるが、総理府の世論調査によると、約5人のうち1人が人権について知らないと答えている。永住外国人に対して日本人と同じ権利を持たせなくてもいいという考え方もあることは世論調査でわかる。しかし、市民的・政治的権利も人権の一つだ。

 日本やアジアの一部の国では、国籍を戸籍とのつながりで考えている。しかし、欧米では、定住している国に国籍があるという考え方がある。

 そういう国の考え方からすると、日本に永住し、日本に生活の根拠がある人はみな事実上の日本国民であるとさえ言える。ただ、日本ではそういう考え方が熟していない。V  日本国籍は選択したくない。しかし、地方参政権が必要だと主張する人たちに対して、「日本国籍を取ればいい」という人は、問題をずらしている。正しく答えていない。地方参政権は、人権の観点から認めるべきで、それが自然の方向だ。国籍を取りやすくする法案で、地方参政権の問題が解決するわけではない。


◆国民か「非国民」か、という極論がありますが…。

 まず、人間であること、国籍の違いに関係なく、人はより幸せに人間らしく生きていけることが基本だと強調したい。

 日本人か外国人かということをあまり強調するのは、人権の観点から意味がない。大化改新(645年)の頃の調べで、天皇家や当時の日本の支配階級の半ばが、蒙古から朝鮮を経て日本に来た人たちだったことが明らかにされている。日本は単一民族というのは神話であって、大勢の人が日本に住み着いてこの国をつくってきた。自分の住んでいる地域をよりよくしていく方向で、定住外国人と向き合うべきだと思う。従来の偏狭な国家主義を捨象していくことが、世界平和に通じる道だと思う。


□■プロフィル■□

宮崎繁樹(みやざき・しげき)

1925年、新潟県出身。49年に明治大学法学部を卒業後、同大学の法学部教授に就任。以後、法学部長、総長を歴任。そのほか、国際人権法学会、世界法学会の各理事長、地域改善対策協議会会長を経て現在、財団法人人権教育啓発推進センター理事長、明治大学名誉教授、弁護士、法学博士。主な著書に『国際法における国家と個人』『人権と平和の国際法』『戦争と人権』などがある。

(2001.11.14 民団新聞)



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