民団新聞 MINDAN
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カヤグム散調・成錦蔦カラク

母から継承した伝統娘へ



金貴子さん

成錦蔦→池成子→金貴子
民族本来の音楽育む・伝統の意味を未来へつなげ

 来月16日まで特別展「李朝の工芸」を開催している東京・目黒区の日本民芸館で今から15年前、在日同胞のカヤグム散調の第一人者で人間国宝の成錦蔦さんと、成錦蔦カラクカヤグム散調首席継承者、成錦蔦カラク保存会代表を務める娘の池成子さんの親子演奏会が開かれた。そして15年の歳月を経た10日、成さんの孫娘、池さんの娘である金貴子さん(31)が、成錦蔦カラクの継承者として第一歩を踏み出す舞台で、初の親子共演を実現させた。

 成錦蔦カラクは池さんのオモニ、成錦蔦さんが創作した流派。池さんはオモニの指導を受けて成錦蔦カラクを守り続けてきた。そして今、祖母の流派は孫に息づいている。

 初の親子共演について「自由気ままに弾いていた散調が、母について指導を受ける中でいかに重要な古典音楽であるかを勉強させてもらういい機会」になったというのが率直な思いだった。

 金さんがカヤグムを本格的に勉強し始めたのは、韓国の大学に入ってから。勉強しながら、成錦蔦カラクを継承していくという重圧を感じている。

池成子さん

 母が残した古典の伝統を受け継いできた池さんは、専門的に古典を守りながらも、今は過渡期の中から新たなものを生み出そうとしている時期かもしれないという。現代音楽をやる人は沢山出てくるだろうが、古典を守る人はいなくなるのではないかという危機感がある。古典は民族本来の音楽。娘が次の時代の後輩たちに、なぜ古い音楽を私たちが愛し、一生かけて大事にするのかという心の意味を伝えて欲しいと願っている。

 金さんは、「実際に若い生徒たちも混乱の時期にあって、母親のような考え方は半分、現代のものだけが残るというのが半分。古典の大切さ、曲だけではない考え方、曲を通しての伝統の意味、伝えることの大切さなどを母に教わった。もちろん現代のものが全て悪いのではなく、大切なのは守っていくということ」だと感じている。

 ただ、私たちは現代に生きているから今の良さを感じながら、古いものを大事にしていきたい、と池さんは娘に語る。

 成錦蔦カラクを継承するに当たって、池さんはあせらずに待った。

 本人が自ら決意しなければ付け焼き刃で終わるからだ。継承したいと言っても、信念が無ければ続かない。悩んだあげく、古典への道を選択した金さんも、嬉しさとともに難しさを感じている。

 成錦蔦カラクの伝承に向けて、母娘の師弟関係は続く。

(2001.11.14 民団新聞)



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