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在日へのメッセージ

石高健次(朝日放送報道プロデューサー)



■日韓TV制作者フォーラム

 去る11月18日、釜山から博多へ向かうフェリー船上で日本と韓国のTV番組プロデューサー計6人によるシンポジウムが開かれ、私もパネラーとして参加した。W杯サッカー開幕を半年後に控え、日韓双方を見つめてドキュメンタリーを作ってきた者が自らの体験を語りながら、文化面での相互理解を深めよういう主旨。九州とソウルの放送局が共同で企画した。

 のっけから韓国側の“集中砲火”を浴びた。私は、「ドキュメンタリーは人間の喜怒哀楽から出発、特に彼らが理不尽な境遇にある場合、その社会的背景やそこに至った歴史的事実を描いていく」と述べた。

 これに対して韓国側パネラーは、最も重要なことは日韓歴史の埋もれた事実を暴くことだ、これをすべてに最優先させなければならないと口をそろえて反論した。番組制作の多様性についても意見交換されたが、韓国側は、「歴史認識の重要性」に終始した。

 私は、韓国人プロデューサーの中に、ある種エリート意識を感じずにはいられなかった。人間を直視しその痛みを描くよりも視聴者に何かを知らしめることがメディアの責任だと考えている。

 また韓国側は日本の植民地支配への執着が強烈だった。「加害者であるあなた達は我々の気持ちをとうてい理解できない」と言われたのはショックだった。番組制作の立脚点や手法、テーマ性の違いは、各々の歴史観の違いに他ならない。

 ひところ日韓共同で歴史研究を行おうという話があったが、異なる民族・国家間の共通の歴史認識など不可能であり、幻想に過ぎないのではないかと改めて思った。

(2001.12.05 民団新聞)



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