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国籍特例法案に代替案

同胞市民団体16項目提言を発表



■民族的少数者の権利保障が優先

 毎年、約1万人が日本国籍を取得、韓国・朝鮮籍者と日本国籍者との婚姻件数も増えるなど複雑、多様化する在日同胞社会。こうした現状を踏まえて、日本において望ましい多文化共生社会を実現していくための具体的な施策を提言していこうという「フォーラム在日2001」(同実行委員会主催)が11月24日、東京・千代田区の在日韓国YMCAで開かれた。

 この提言(草案)は日本の与党3党プロジェクトチームが国会で成立を図ろうとしている「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法律案(仮称)」(国籍特例法案)に対する包括的代案となっている。内容は重国籍の保証、民族的マイノリティーの権利保障、戦後補償の実現などを柱とする16項目。

 この日のフォーラム席上、作業部会で提言作成に携わった田中宏龍谷大学教授(在日韓国朝鮮人をはじめ外国籍住民の地方参政権を求める連絡会共同代表)は、「特別永住者に日本国籍を付与すれば問題がすべて解決するわけではない。民族的マイノリティーとしての権利を保護し、発展させる措置が伴わなければならない」と提言作成に至った背景を具体的に説明した。


■国籍付与で解決しない

 同じく、金敬得弁護士(在日同胞21世紀委員会代表)は、国籍特例法案を考える視点として過去の国籍差別による不利益が是正されたか日本社会で韓民族化が保障されるシステムがあるのかという2点を指摘、「国籍を与えておしまい」とする日本政府の考えには反対の立場を表明した。


■共通の土俵づくり急ぐ

 そのうえで、日本国籍者も含めて誰もが出自を明らかにし民族的に生きられる「共通の土俵づくり」に向けて在日の総意をどう形成していけるのかがいま問われていると強調した。

 これに対して、「薫弁護士(在日コリアン法律家協会共同代表)は国籍特例法案について「在日の選択肢を増やすことにつながる」として「反対しない」との立場を表明した。また、憲法学が専門の近藤敦九州産業大学助教授は「永住者に限っては出生と共に日本国籍を認める生地主義という考え方がこれから日本社会でも主流になるだろう」との見方を示した。

 会場からは「法案をどうすべきかということと、どう向き合うのかはわけて考えるべきだ。いまは一喜一憂しているときではなく、在日のコミュニティをどうしたら維持発展していけるのかを一緒になって考えるべきだ」と冷静な論議を呼びかける意見もあった。

(2001.12.05 民団新聞)



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