民団新聞 MINDAN
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在日へのメッセージ

「本名を言いました」

藤原史朗(全国在日朝鮮人教育研究協議会代表)



 先日、在日同胞21世紀委員会主催の第2回フォーラム(神戸市で開催)に日本人教員として参加した。「地方参政権」を棚上げに「国籍取得特例法案」が準備されつつある状況下、21世紀の民団の在り方を提言する熱の入った公聴会だった。

 戦後60年、本国の動向と日本社会の差別・同化の間におかれながらも在日韓国人の総代表団体として存続してきた民団。

 その存亡をかけての討論だと、小生にもひしひしと伝わる。

 主として在日コリアンと日本人の子ども達との教育に関わってきた31年、私にできたことは何だったのか、片方で生徒の作文を読みながら考えた。

 「この前のホームルームで私は本名を言いました。特設(全校人権学習)が始まる前から何を言おうかと緊張していました。同胞の先輩が一人で訴えた全校生へのアピール。それへの感想を皆が順番に発表し、ついに私の番にまわってきました。ほんまに倒れそうなぐらい震えて全身がしびれていました。昨夜、母が、学習の材料にされるんやったら言うのはやめときと言った。朝出かけるとき、あんた言うなら泣きやと笑っていたけれど、発表するとき、泣いてしまいました。紙に書いているのが読めず声にならんかった。座ったらクラスの女子の皆が泣いていました。皆がありがとうとか言ってくれたけど、一番印象に残っているのは、加奈は加奈やからの言葉。本当に嬉しかった」。

 21世紀は「人権の世紀」と自他共に呼ぶが、はやくも、その言葉が宙にまう昨今の状況下、在日コリアン16歳の精いっぱいの声である。

(2001.12.19 民団新聞)



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