民団新聞 MINDAN
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激動の年、問題の所在直視を




 師走を迎え、日本漢字能力検定協会が、今年の世相を表す漢字を「戦」と発表しました。2位は「狂」、3位は「乱」と続きます。

 今年の初頭、多くの人は夢や希望を新世紀1年目の年に託したはずです。にもかかわらず、生活者の目は、否定的にしか評価しませんでした。


■在日同胞を取り巻く状況

 国際的には対米同時多発テロ勃発とその報復行動による緊張激化が今も続いています。韓半島に目を向ければ、昨年の歴史的な南北首脳会談によってもたらされた平和定着や協力・交流拡大への高揚とはうって代わって、再び関係が冷え込み始めています。金正日国防委員長のソウル答礼訪問も暗礁に乗り上げているのが現状です。

 日本社会も長引く不況から脱しきれず、史上最悪の失業率を記録しました。追い打ちをかけたのが、「狂牛病」騒動で、同胞焼肉関係業者には厳しい年の瀬となっています。

 在日同胞社会の課題も未解決のまま年を越えていきます。その一つが、地方参政権の獲得問題です。在日同胞をはじめとする定住外国人と日本人との共生を根付かせるための「地方選挙権法案」は、一度も審議されることなくまたも継続審議となりました。

 また、歴史教科書問題や小泉首相の靖国神社参拝問題は、韓国をはじめ近隣周辺諸国に日本の右傾化を強く印象づけることになりました。


■今こそ平和と人権尊重へ

 しかし、あまり落胆する必要はありません。見方を変えれば、問題の所在が明らかになったと言うことができるからです。これら一部保守層で構成する「抵抗勢力」の根っこには、先行きの見えない日本社会の閉塞感があります。世界の潮流である国際化に対応しきれないあまり、「国粋化」で乗り切ろうとする内向きで時代錯誤の発想法が根底にあります。

 参政権運動つぶしとして浮上してきたいわゆる「帰化緩和法案」にしても、私たちの運動が日本社会に浸透したからこそ、問題の本質に目をつむり、反対派をして執拗に日本人か外国人かの感情的な二分法で国民をミスリードしようとする意図が見て取れます。

 歴史教科書問題も同様に、多文化共生教育の広がりにあわてたからこそ「復古調」で乗り切ろうとした訳です。

 在日同胞が求める人権獲得の運動の進展には、これまでも様々な妨害がありました。しかし、私たちは指紋制度撤廃をはじめ、特別永住権獲得など、民団組織の全国的なネットワークで着実に権利を獲得してきました。

 21世紀は人、モノ、お金が世界規模で動き、情報が日進月歩で急展開する時代ですが、要は人間の営みです。韓日両国のはざまにある私たち在日同胞の課題が達成され、平和と人権が尊重される世紀になるよう、たゆまずに努力していきましょう。

(2001.12.19 民団新聞)



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