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韓日文化人グループ「玄琴の会」

民間レベルで本音の交流



日高仁会長

◆しょく罪∴モ識超えて相互理解の道さぐる

 韓国と日本の伝統芸能を組み合わせながら、新たに共有できるものを生み出していくことを目的として98年に結成された「玄琴(コムンゴ)の会」(日高仁会長)。韓日の文化・芸能人によって構成される同会はこの間、数々のイベントや講演会を開催し、民間レベルでの親善交流を行ってきた。先月にはソウルで、韓日混成スタッフによる初の舞台劇を披露するなど、活発な活動を展開している。韓国人と日本人の相互理解を目指す同会の交流の輪は、着実に両国で広がっているようだ。初の舞台劇にも挑戦


■主張ぶつけあい共同作業

 「玄琴の会」は現在、両国併せて約100人の会員を抱える民間団体。

 その中には、韓国の伝統芸術界の重鎮である玄琴奏者の李世煥さん、韓国舞踊家の鄭明子さん、日本舞踊家の花柳春涛さんなども名を連ねている。

 同会発足の経緯は、今から10年以上前、日高会長の友人である花柳さんが韓国を訪れた際、偶然耳にした玄琴の音色に魅せられ、李さんと知り合いになったことがきっかけ。

 94年、花柳さんが俳優座で開いた日本創作舞踊展で、日本舞踊のための玄琴組曲「彷徨―雪の章」を李さんが演奏。日本舞踊と玄琴の新たな出会いとなった舞台から4年後の98年、多くの賛同者によって同会が結成された。

 さっそく同年、東京のイイノホールで「日韓伝統楽器による日韓古典舞踊展」を開き、玄琴と日本舞踊、津軽三味線と韓国古典舞踊という両国の伝統芸術の交流を舞台で実現させた。

 出演者は李さん、花柳さん、鄭さん、韓国の打楽器グループ「プリ」のメンバーの金雄植さん、津軽三味線の金澤(かなざわ)栄さんらそうそうたるメンバーだ。同展は翌年、韓国でも公演された。

 構成と演出を手がけた日高会長は当時を振り返り、「日本でも韓国でも、古典芸術を紹介する専門家は沢山います。両国の2つの要素をからませ、別の新しいものを作ることを自分がやらなければと思った」と話す。

 この公演を皮切りに、ソウル国立国楽院での「日本舞踊講演会」、在韓日本大使館公報日本文化院での「日本舞踊教室」や「能と日本舞踊による講演会」などを精力的に行ってきた。

 昨年3月に開始された「日本舞踊教室」は毎月2回、花柳さんの指導下に約30人の韓国人が日本舞踊を学んでいる。きっかけは、花柳さんの韓国公演を見た日本学科に通う学生たちから、「日本の精神を日本舞踊から学び取れないか」と希望されてのこと。今では生徒たちが、各自で着物を着付けるまでになっているという。来年3月には卒業公演を予定している。日高会長は「他国の文化を知りたいという熱心さが伝わる」と感心する。  日高会長は長い間、韓日間の話しにおよぶ度に、日本人の中に生じる「変な遠慮」を感じていた。その遠慮を乗り越えないと、いつまでたっても本当の交流ができないと思ってきた。

 そんな思いの中、一冊の本が日高会長の気持ちを突き上げた。作家・村田喜代子さんの著書「龍秘御天歌」だ。同書は、有田焼きの基礎を築いた韓国人陶工・李参平と、百婆仙をモデルに描いた歴史時代小説。内容や切り口の面白さもあったが、韓国人と日本人が本音でぶつかり合うことによって、そこから真の相互理解が生まれるのでないかと、舞台化を決めた。

 同書を舞台劇化した「哀号!哀号!」は、昨年11月9日から18日まで、韓国、成均館大学内の新千年劇場で上演された。

 キャストは、原作の味を損なわないために、日本に連行されてきた第1世代は韓国の俳優、息子たち第2世代は在日の俳優、そして日本の俳優たちを配した。

 けんかをしながらも、同じ目的を持って一緒に作業し、一つの舞台を作り上げたことに充実感を感じている。

 来年、同作品の日本公演を目指す。「文化交流は、人物交流があって成立する」と日高会長は強調する。

 「小さな歩みでも何かの形で役にたちたい。韓国に対して、日本人が遠慮がちにやっていることで、せっかくもっと面白いことが沢山できるはずなのに、それが邪魔になってできなくなるのは嫌です。韓国というものをぎょうぎょうしく考えないで、当たり前になってしまうような関係を築いていきたい」と話す。

(2001.12.19 民団新聞)



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