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在日へのメッセージ

小田川興(前朝日新聞編集委員)



「新大久保精神」に学ぶ

 新大久保駅でホームに転落した人を助けようとして犠牲になった李秀賢さんと関根史郎さんの一周忌が営まれた。田中真紀子前外相も出席した慰霊祭には、地元商店街の人たちが大勢駆けつけ、厳粛ながらも手づくりの温かさがじんわりと伝わってきた。

 追悼文化祭では二人の遺影を前に、在日の世界的バイオリニスト、丁讃宇さんが遠くに去った愛する人への思いをこめた「同心草」や「イムジン河」を演奏し、崔相龍韓国大使夫人、金淑垠さんの韓国歌曲とともに胸をゆさぶられた。

 この文化祭は秋光浩・韓国ラグビー協会会長が「韓国と日本の人たちが胸襟を開き、真の友情を育むきっかけに」と実行委員長を引き受け、指揮者の稲田康さんらも協力して、日本人と在日、韓国人のきずなが実った。日韓ラグビー界のスクラムがそれを支えた。

 二つの会場で実感したのは「人はその行いが純粋であるほど与える衝撃は強く、その行為は人々の感動の輪に育まれて大きく花開く」という忘れられがちな真理である。

 一周忌を契機に生まれた「李秀賢顕彰奨学会」は、まさに大輪の花といえる。奨学金の支給対象を韓国に限らず、アジア全体からの留学生としたことに、李君の遺族だけでなく、韓国の人々の広い心を見る思いがする。

 ソウルと釜山でも開かれた追悼文化祭では、関根史郎さんの写真が展示された。歴史教科書問題でぎくしゃくした日韓だが、人間味あふれる作品を通じて日本人写真家の人柄が韓国人に届いたことだろう。東京の文化祭フィナーレ。合唱団が掲げた標語は「新大久保スピリッツにエールを」だった。

(2002.02.06 民団新聞)



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