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差別や偏見ない心の解放区

同胞児童だけのクラブ



川崎市ふれあい館子ども事業

 川崎市ふれあい館(「重度館長)の子ども事業のひとつ「ケナリ(れんぎょう)クラブ」は、東日本地区で最も古い歴史を誇る在日同胞だけの子ども会だ。毎週1回、土曜日の午後、同館を中心に開かれ、30人のオリニが集う。民族差別は少なくなったとはいえまだまだなくならないなか、オリニがほっと一息つける心の解放区≠ニしての役割を果たしている。


◆民族的出会い大切に…初代卒業生は現在指導員

 土曜日の午後、ふれあい館の館内放送が「ケナリクラブ」の開始を告げると、オリニがどやどやと集まってきた。学校ではストレスも多いが、ここはその「発散」の場となっている。

 「ケナリクラブ」は在日同胞児童だけの民族クラブ。毎週1回、午後4時から5時半まで開かれている。民族差別や偏見によって心を傷つけられたりすることの多いオリニに楽しく民族的な出会いを体験してもらうのが目的だ。社会福祉法人青丘社が川崎市からふれあい館の運営を委託される以前の80年から続いている。

 通常は1年生から6年生までを3グループに分け、民俗ノリや工作などを楽しんでいる。このほか、全員が一緒になっての体験学習、夏休みには泊まりがけのキャンプもある。

 ふれあい館ではこれまで様々な子ども事業を行ってきたが、『ケナリクラブ』だけは参加者が一度も減っていないのが自慢。ふれあい館職員で自らも「ケナリクラブ」出身者である金秀一さんも「うち(ふれあい館)の柱」と胸を張る。

 7日は全員でキムチもんじゃ作りを楽しんだ。

 張昌洙君(小学4年)は焼き上がったばかりのキムチもんじゃをほおばりながら、「ケナリクラブは友だちと会えるので楽しい」という。姜芙伶ちゃん(小学5年)も「ここに来て友だちができた。学校より楽しい」とそっと打ち明けてくれた。

 金世野君(小学4年)は小学校1年生の時からの参加。いまは弟の理宇君も誘って、兄弟で毎週通うほど。世野君は「みんなとホールで遊ぶのが楽しい」と話している。

 元麻李ちゃん(小学6年)は「同じ韓国人の友だちがたくさんいる。韓国の遊びとか料理が好きです。6年生で『ケナリクラブ』が終わるのが寂しい」と胸の内を語った。

 オリニにとってなによりも心強いのは、同じ痛みを共通体験として持つ8人の在日同胞指導員の存在。指導員の一人で現在、川崎市の職員として勤務する金久高さんは「ケナリクラブ」の初代卒業生の一人。指導員としてすでに10年が経つ。いつも子どもの目線で「ケナリクラブ」に関わっており、オリニの人気を一身に集めている。

 同じく初代卒業生の「平舜さんは「『ケナリクラブ』が在日コリアンの子どもたちにとって拠り所となっているのは昔から変わらない。子どもたちが安心できる場にしたいといつも願っています」と話している。

 ふれあい館の職員で、指導員の一人でもある崔江以子さんは「毎年、学校で民族差別がある。そのたび、子どもたちは心に大きな傷を負ってしまう。私たち指導員は何かあったらすぐにでも学校現場に駆けつけるぐらいの気持ちを常に持ちながら『ケナリクラブ』をやっていこうとの約束事みたいなのがある」という。

 「重度館長は「『ケナリクラブ』のおかげで子どもたちが自信がついたという意見がある一方、なんで子どもたちを分けるのか、逆差別だとの声も聞いた。しかし、差別の状況は昔に比べて少なくなったとはいえ、まだまだ存在している。こうした民族クラブがなくてもいい状況が来ることを祈っている」と話している。

(2002.02.13 民団新聞)



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