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人権思想の定着を



 今年2月、東京都内の中学2年生の男子生徒数人が、集団でホームレスの中年男性を殴り殺すという凄惨な事件が起きた。

 少年たちは事件の数日前、図書館で騒いでいたのを被害者に叱られ、それを根に持ち、腹いせに暴力行為に突っ走った。普段から軽蔑していた対象に襟を正されて、自尊心が傷つけられたとも聞く。

 もともと殺意があったのではないだろう。しかし、寄ってたかって数時間も一人の人間に暴行をし続ければ、どういう結果になるかくらい、14歳にもなってわからなかったのだろうか。それとも格闘シーンが売り物のテレビゲームの延長で、虚構と現実の世界の境界がなくなってしまったのだろうか。

 一人では何もできないのに、徒党を組むと蛮行をもしでかす群衆心理。人と同じことをしていないと村八分にされるのではないか、という不安が生む画一化の社会。事件の背景には、そういう精神構造がある。

 だが、何と言っても深刻なのは、人命軽視、人権無視がはびこる昨今の社会風潮だ。虐待の末に、幼な子を死に至らしめる親の事件も珍しくない。

 「何で殺人がいけないのか」とうそぶく餓鬼にまともに答えられない大人がいると聞いた。この社会の病理にメスを入れなくてはならない。一人に一つずつ大切な命があるという人権思想を根づかせることが大人たちにとって急務だ。(C)

(2002.03.06 民団新聞)



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