民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
逆風のなか課業実現着実に

第55回定期中央委員会・2001年度総括報告



活動報告(事業総括)

 21世紀最初の年だった昨年、われわれは、世界的には平和と人権が尊重される世紀の初めての出発点として、また、韓半島でも平和定着と協力が進展して統一への大路が確実に切り開かれることを祈願してきました。また、同胞社会でも長年の宿願であった地方参政権が立法化され、困難に直面している金融問題についても解決されることに希望と期待を託してきました。

 しかし、われわれの願望とは裏腹に、世界的には昨年9月11日に発生した「同時多発テロ」による国際的なテロ対反テロ「戦争」にともない、世界的な規模で対立と緊張が激化しました。韓半島でもまた、米国ブッシュ政権の対北政策の変化とあわせて「テロ事件」の余波、さらには北韓の消極的な姿勢によって南北関係は足踏み状態を続けています。われわれ在日同胞社会もまた、破綻した信用組合を一日も早く引き受けなければならないという課題を抱えたまま苦闘しなければなりませんでした。これは日本金融当局の政策変化があり、わが同胞側も統一的な認識と行動を取れないままできたためです。しかし、幸いにも民族系信用組合のうち破綻信組については引き受け先が決まり、安堵しているところです。

 日本社会ではいまだ続く長期不況のなか、改革を標榜する小泉政権の登場で不良債権整理をはじめとする構造改革に対する期待がふくらんだ反面、政治的には保守回帰傾向を見せ、歴史教科書問題、靖国参拝問題などでアジア近隣諸国と新たな緊張を引き起こすにいたりました。このような情勢がわれわれの参政権問題に悪影響となって作用しました。

 このように昨年の同胞社会をとりまく情勢は、逆風と悪条件がわれわれの課業遂行のまえにたちはだかったのです。しかし、本団はこのような逆境の中にあっても、課業実現のため根気よく努力してきました。


市民団体と杉並区役所を取り囲む団員たち

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地方参政権獲得運動

全国団員ら4000人決起大会
再三の継続審議に抗議

 一昨年(2000年)日本国会で採決直前までいった永住外国人参政権立法法案が連立与党内の事情により昨年1月、第151通常国会に継続審議法案として持ち越されました。これとあわせ「国籍取得要件緩和法案」が台頭、地方参政権法案と相殺する意図のもと国会に提出されそうな動きが起きました。

 本団はただちに、この「国籍要件緩和法案」が地方参政権に反対するために提出されたとすればこれに反対せざるをえないとの態度表明をすると同時に、参政権法案の早期立法化のために各政党への要望活動を強化しました。

 しかし、小泉政権の登場で新しい問題(歴史教科書問題、靖国参拝問題)などが起こり、参政権問題がさらに難しい条件のもとに追いやられました。特に執権政党である自民党執行部から慎重論が出て反対論が優勢となった状況から結局、参政権法案はまたもや継続審議となり(5月29日)次の臨時国会に持ち越されました。

 これに対して本団は6月5日に「永住外国人に地方参政権を!6・5全国決起大会」を展開、継続審議に決めたことへの抗議と早期立法化促求を対内外的に強力にアピールしました。

 北海道から沖縄に至る日本全国から4000名に達する団員たちが東京・日比谷野外音楽堂に集まり、日本の各政党代表者たちと市民団体代表らが席をともにした大会は、再三継続審議で法案成立を遅延させている日本の政治家たちに対する抗議の熱気がみなぎっていました。

 大会決議に従い、参加者全員が早期立法化を促求するため日本国会に対する請願デモを敢行しました。

 この大会とデモを通して団員たちの参政権に対する意志と底力を対外的に鮮明にしました。

 9月に始まった第153回臨時国会では「9・11同時多発テロ事件」にともなう日本の政治的な事情により一度もまともに審議することなく、今年1月の通常国会でも継続審議案件として追いやられました。このような状況にあっても昨年12月中旬、ソウルで開かれた韓日・日韓議員連盟合同総会で「来年、通常国会で参政権立法化を図るため日本国会議員たちが積極努力する」との共同声明書を採択しました。これは困難な与件のなかでも参政権立法化に希望をつなぐ鼓舞的な決議であり、高く評価しなければなりません。


ソウルで出会った全国のオリニたち

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「オリニジャンボリー」の成功

民族的な自覚を育む
保護者の連帯感育成にも寄与

 昨年8月23日から27日まで4泊5日の日程で小学校4,5,6学年を中心に約500余名が「21世紀の夏休み、みんなとソウルで出会いたい」というスローガンのもとソウルで集いジャンボリーを成功的に開催しました。

 この「オリニジャンボリー」は21世紀初頭の4,5世たちに対する民族教育の契機を新しくつくっていかなければならないとの方針のもと、約1年6カ月の間、民団中央を中心に企画、実行のための準備をしてきた事業です。

 この間、本国政府の支援と青年会、学生会、母国修学生、そして市民グループなど全国地方本部の協力のもと、初めて開催した全国的な規模のジャンボリーを成功させることができました。

 まず、今度のジャンボリーを通して全国各地に分散しているわがオリニたちが個々の友情と民族的な紐帯を持ち、保護者たち(学父母)の4,5世子弟たちの民族教育に対する共通認識と連帯感を持つようになりました。

 そればかりか、本国のオリニたちとの交流を通して最も初歩的な民族意識を自覚できる契機となり、日本社会で育つわがオリニたちの主体性確立に大変大きな自信感を与えました。

 その後もジャンボリーに参加したオリニたちと保護者らの交流会が開かれ、オリニたちの健全育成のために地域社会と保護者の役割について認識を新たにしています。

 わが同胞子弟の90%以上が分散して日本の学校で教育を受けている現実を勘案するとき、孤独感を解消しながら学父母の団結した力で民族的な自覚を強くし、これを持続的に育てていかなければなりません。

 21世紀の初頭に本団が試みたオリニジャンボリーを通して新しい民族社会教育の基盤がきちんと育つのを願うばかりです。今度のオリニジャンボリーの成功を契機に今後とも継続的なオリニ教育のために努力していかねばなりません。


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歴史歪曲教科書

不採択運動・正しい歴史を次代に
日本の市民団体とも連携

 昨年初めから一部日本の保守的な学者らによる「新しい教科書をつくる会」が編さんした歴史教科書が日本文部省の検定を受け、今年から教科書として採用する動きが活発化しました。

 「つくる会」が編さんした歴史教科書はアジア近隣諸国の近・現代史を歪曲しているだけでなく、日本の歴史自体に照らしても史実に立脚せず一方的に美化するなど、アジア諸国との友好親善関係を害する憂慮があるものでした。

 本国政府も日本政府に対して再修正要求を強力に促求してきましたが、本団としても日本文部省にこの教科書の再修正とともに認可しないよう強力に要求してきました。しかし、昨年4月、日本文部省は字句修正を一部ほどこしこの教科書を認定しました。

 本団は時間的に見ても今年から日本の中学校で教科書として採用する可能性をまず押しとどめなければならないとの方針のもと、全国レベルで歪曲された歴史教科書の不採択運動を展開することとしました。

 まず、全組織をあげて不採用要望書を各地域の教育長、教育委員会に送付して日本の良識ある市民団体、PTAなどと連携を強め、世論化に注力しながら不採用運動を強力に推進してきました。また、これと同時に「在日同胞学者らの集まり」を組織して関東、関西で会議を開き、日本の良心的な教育者、学者らに訴える活動を積極的に展開しました。

 歪曲歴史教科書採択が憂慮された栃木県下都賀地区、西東京の国立市、東京の杉並区などの地で該当地方本部、支部団員たちと日本の市民団体などが連帯して不採用の成果をあげてきました。全国本団の活動により、総524個地区の日本の公立中学校中では教科書採択地区が一つもないという大きな成果をあげました。

 採択率を見ると、東京都と愛媛県の養護学校の一部と私立中学のうち6校が採択しただけで、全国的には0・04%にしか過ぎませんでした。

 このような成果は本団員らの熱誠的な活動、そして本国と日本のたくさんの市民団体の声援に負うところが大きかった点を忘れてはなりません。

 教科書問題は今度だけの一過性の問題ではなく継続的に警戒心を持って注視いかなければなりません。


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「2002年W杯大会」後援事業

組織募金 目標の80%達成
1次分JAWOCに6400万円伝達

 「ワールドカップ大会」歴史上初めて韓・日両国が共同開催する世界的なイベントを必ずや成功させ、日本社会での共生、共栄を図って韓日友好親善の基軸にしようとの方針のもと後援事業を展開してきました。

 これまで同胞社会の様々な事情によって募金活動を中心にした後援事業は思いのほか進んでいません。

 しかし、日本の長期不況、わが信用組合の破綻、そして狂牛病が重なるなどの困難な与件を抱えながらも組織募金は当初目標の80%以上を達成しました。さる1月10日、JAWOCの那須会長に第1次分として6400万円を伝達しました。

 今度の「ワールドカップ大会」の歴史的な意義に鑑み、どれほど同胞の事情が困難であっても後援事業を一定の水準まで達成して「2002年ワールドカップ大会」を成功させるよう全力を注いでいきます。


3信金が合併して誕生したあすなろ信用組合

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民族金融機関問題

新銀行構想ざ折の背景に
日本金融当局の政策変化
同胞の多様な声まとめられず

 一昨年(2000年)末、関西興銀と東京商銀が相次いで破綻したことで同胞経済の70%以上が資金供給源を失い、連鎖倒産まで憂慮される危機的な事態に直面しました。本団は早いうちに破綻組合を引き受ける金融機関の設立が緊要だとの判断に立ち韓商連、韓信協とも協議して「特別対策委員会」を構成しました。三者が協議した結果、在日同胞経済の再生と活性化のために全国展開が可能な引受機関である全同胞的な銀行設立と同時に、既存組合の自助努力を求めていかなければならないという点で意見の一致をみました。このような合意に基づき昨年1月から韓信協が推進してきた既存組合の合併・統合を通した普通銀行(韓信銀行)への転換を支援してきました。しかし、韓信協自身がこのような「韓信銀行」構想においては、昨今の金融改革の流れから韓日両国政府の理解を求めがたい状況だと認識し、断念するに至りました。

 本団はこのような事態に直面してまず、大使館をはじめとする関係者とも協議のうえ、全同胞が参与する新銀行設立のための推進委員会を構成しました。(5月11日)

 そして新しい銀行の主体はあくまでも出資者と金融専門家で構成する機構でなければならないとの観点から、本団は新銀行の産婆役または支援部隊としての役割を担うようにしました。

 その間、銀行設立体制として推進本部で発起人会を7月末に発足し(仮称ドラゴン銀行)認可推進母体として中間会社(株式会社ドラゴン)を設立、変更しながら大衆的な出資金募集を展開することとしました。

 破綻組合は一括引き受けすることとし、銀行認可を待って可能な限り全団的な出資募集に転じ、全同胞的な銀行として発展させるとの方針のもと「推進委員会」の名称も「支援委員会」に変えるなど着々と準備態勢を整えてきました。

 しかし、破綻組合引き受け過程に置いては入札制が導入され、近隣組合と新銀行設立母体が競合する関係になってしまった結果、近隣組合が破綻組合引き受けの優先権を持つに至りました。このため、破綻組合引き受けが前提条件だった新銀行としては銀行設立そのものを断念せざるをえませんでした。新銀行設立が挫折した背景としては、資本の健全性よりは公的資金(費用)を最小化したいという日本金融当局の政策変化と、同胞社会の意見不一致を指摘しないわけにはいきません。

 特に朝銀関係の朝鮮総連に対する不正融資問題が表面化するに至ってからは公的資金(日本国民の税金)投入に対する世論も悪化、日本金融当局の態度変化をもたらしたようです。また、一方ではわれわれ同胞の銀行設立に対する理解不足、新銀行設立主体に対する反発などで意見と行動をひとつのものに結集できませんでした。

 本団としてはこのような事態を誠に遺憾なことだと考え、また同胞の多様な声をひとつにまとめられなかった責任を痛感するものです。しかし、引き受け組合が民族金融機関、ないしは民族系だという点からは破綻組合などの精算を免れることになり、幸いなことだと思います。

 以上のように在日同胞社会の金融機関問題は新しい局面を迎えることになりました。何よりも現存組合が「ペイオフ」解禁事態を克服していかなければなりませんが、一方では引き受け組合が健全に育成されるよう全同胞が団結し支援していかなければなりません。


在日同胞21世紀委員会の「未来フォーラム」から

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「同胞ネットワーク」構築

まず民団中央、LAN構築を完了

 情報の共有と蓄積なしには在日同胞社会が情報化時代に「共同体」として存続できるわけもなく、情報化技術を有益なコミュニケーション手段として活用し、21世紀に対備する新しい「共同体」のための「ネットワーク」を構築しなければならないとの方針を昨年の中央委員会で決定しました。

 「21世紀委員会」の「IT特別部会」の提言に従って昨年を「同胞ネットワーク構築元年」と規定、まず民団中央本部から情報化に対応できる基盤整備をするようにしました。

 その結果、IT推進チームを構成して全職員が各自パーソナルコンピュータを持つようにし、中央本部のイントラネット(LAN)構築を完了しました。

 そしてグループウェアシステムを導入してスケジュール、回覧、掲示板プロジェクトなどの情報の共有化を通した業務の効率化を期しました。また「民団ホームページ」を充実化して民団新聞だけでなく料理、ブライダルサイト、2002年ワールドカップ、スポーツ、生活「便利情報」も追加し、団員たちの助けになるよう努力してます。

 昨年の方針はおおよそ実現し、次の段階では全団員のデーターベース化と中央と地方のネットワーク構築に向けて継続推進していく態勢をとりつつあります。


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同胞社会の和合と交流

対話に応じない朝鮮総連中央
交流事業は継続推進

 昨年中に金正日国防委員長の訪韓が実現し、朝鮮総連も5月には第19回全大会を開いて新しい執行部が構成されれば、同胞社会の和合と交流に新しい契機が訪れるものと期待しました。

 しかし、事実の進展はわれわれの期待とは裏腹に金正日国防委員長は約束を違え訪韓しないばかりか、南北対話自体も北側の無誠意によってもとのまま進展しないでいます。そればかりか朝鮮総連もまた21世紀最初に開かれた第19回全大会は旧態依然とした「金正日忠誠一辺倒」で終始しました。在日同胞とはなんら関連のない政治方針、そして同胞社会の現実とかけ離れた組織方針を踏襲しているにすぎませんでした。

 昨年3月の「大阪ハナマトゥリ」を最後に実質的に朝鮮総連同胞との交流増大はありませんでした。一昨年には「6・15」南北共同声明の熱気のなか同胞社会で165回、各級組織でも209回にわたる交流活動に同胞たちが参与しましたが、昨年は111回にわたる交流しか実現しませんでした。

 朝鮮総連中央は依然として民団中央との対話を拒否しています。もちろん朝鮮総連自体、朝銀の破綻、民族学校の存立問題など組織衰退に対する防御に追われ、民団との本格的な対話に応じられる状況にはないというのも事実です。

 南北関係に進展がない状態ではこれからも同胞社会の和合と統一は難しいものと見られます。しかし、本団は在日同胞社会の統一を目指しながら交流事業を持続的に推進していかなければなりません。

 2002年度、本団を取り巻く内外情勢は順風とはいえず、逆風という悪条件の中で課業を遂行していかなければなりません。

 地方参政権問題と同胞社会の和合と交流面では進展が見られませんでしたが、歴史教科書不採用運動で発揮した本団組織の底力と「6・25決起大会」で見せた本団の忍耐と意志と「オリニジャンボリー」で成し遂げた主体性確立のための契機を土台に21世紀初頭、民団の発展のため持続的な努力を誓いながら総括を締めくくります。

(2002.03.06 民団新聞)



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