民団新聞 MINDAN
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大きな感動・興奮共有したい

鼎談・韓日共催W杯の成功めざして



 韓日共催のワールドカップサッカー大会(W杯)まで80余日。アジア最大級のサッカー専用スタジアムを誇る埼玉県では、6月4日に日本代表の初戦となるベルギー戦や準決勝など、4試合が行われる。W杯鼎談企画第2弾として、土屋義彦県知事と駐日韓国大使館の崔元善総領事、民団埼玉県本部の景民杓副団長にW杯成功にかける思いなどについて語っていただいた。


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埼玉の勢い
子どもたちに夢と希望を  土屋
両国関係の深さアピール  崔

 崔 昨年5月に浦和、大宮、与野の3市が合併して、100万人の政令指定都市「さいたま市」が誕生し、10月には埼玉スタジアム2002がオープンした。このスタジアムには土屋知事の思い入れも強いと思うが、W杯が近づくにつれて手応えはどうか。

 土屋 「子どもたちに大きな夢と希望を」「埼玉をサッカーのメッカに」そして、「防災活動の拠点に」という3つの理由から6万3千人規模にした。もともとサッカーの盛んな土地柄だが、アジア最大級のサッカー専用スタジアムの完成とともに、さらなる盛り上がりを見せている。6月2日のイングランド対スウェーデン、日本代表の初戦となる4日の対ベルギー戦、6日のカメルーン対サウジアラビア、そして6月26日の準決勝を含め4試合が行われる。是非とも日本チームには、この素晴らしいスタジアムで、持てる力を遺憾なく発揮してもらいたい。日本チームの歴史的な1勝が、わが埼玉スタジアムで実現するものと確信しているし、超一流のプレーの数々に、世界の人々と大きな感動・興奮を共有したいと思う。

 景 私たち在日同胞にとっても、地元開催というのは大きな名誉だ。昨年11月には、ソウル市選抜チームや在日朝鮮人中学選抜チームが招待され、第1回埼玉国際ユースサッカー大会が新築されたばかりのスタジアムで行われた。かつてなかった「南北交流」だ。東京に隣接しながらも、埼玉にはまだまだ自然の美しさが残っている。古くから韓国とゆかりがある高麗神社はその代表と言える。その一方で、さいたま新都市は21世紀に躍動する埼玉の象徴になっている。新旧のハーモニーは、「世界の埼玉」の顔だ。

 崔 昨年10月、民団の主催行事「10月マダン」の会場である高麗神社を訪れた。そのたたずまいや雰囲気に、韓日の関わりの深さを改めて痛感したが、そのことを知る韓日両国の国民はどれほどいるだろうか。韓日関係の深さを含め、世界に向けて埼玉の良さをアピールすべきだと思う。

 土屋 ボランティアをはじめとした県民の温かいおもてなしが、本県の魅力を一層引き出すものと確信している。W杯を世界中に「彩の国さいたま」を紹介する絶好の機会ととらえ、自ら先頭に立って埼玉の魅力を訴えていきたい。


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市民レベルの交流
カギ握るボランティア  崔
「草の根」推進拡大期待  景

 景 ボランティアは追い込みに入っていると思う。具体的な役割を知りたい。

 土屋 昨年4月から6月にかけて募集したところ、全国で最も多い4千人を超える申込みがあり、約2千8百人が登録している。現在、英語をはじめとする語学研修や車椅子の介助、応急手当などの研修に熱心に取り組んでいるが、その成果をぜひ本番で発揮してほしい。

 崔 市民レベルでの交流のカギを握るのもボランティアの対応如何だ。世界の人々を迎え入れる側が、外国人をフーリガン予備軍のように見ることだけは避けてほしい。警備は警備当局に任せて、民間次元では史上初の共催による世紀のイベントを、いかに楽しく成功させるか。その視点を忘れてはならない。

 土屋 ボランティアからは、「ほかのものには代えられない魅力がある」「日本の第一印象を決める役割をもっている」など前向きな声が寄せられている。心強い限りだ。世界のサッカーファンから「埼玉はすばらしい」と言われるように、ボランティアと協力してすばらしい大会にしたいと思っている。

 崔 土屋知事は韓国との交流が深くて長いと聞いている。W杯を通じて韓国の自治体との姉妹都市締結の可能性は。

 土屋 参議院議員だった1965年に初訪韓し、朝鮮戦争で荒れた山並みを機上から見て、「緑で埋めたい」と思った。帰国後、各方面に働きかけ、埼玉県特産の西川杉の種を贈ったが、約50万本が大きく育ったと伺っている。韓国にはこれまで25回も訪問するなど、交流を深めてきたが、残念ながら埼玉県は韓国との間では姉妹提携をしていない。県下自治体のうち、秩父市が江原道・江陵市、所沢市が京畿道・安養市、狭山市が慶尚南道・統營市、日高市が京畿道・烏山市と姉妹提携をしている。

 景 できるところから具体的な交流を進めてほしい。折しも今年は両国政府間で決めた「韓日国民交流の年」だ。

 土屋 「政府対政府のオフィシャルな外交もさることながら、地方自治体が先頭に立って、きめの細かい草の根の交流を行うことが、日本が将来にわたって平和国家として生き延びる道だ」とかねてより言ってきた。

 29日から31日には、韓国をはじめとした9か国11チームを招待し、第1回埼玉県国際ジュニアサッカー大会を行う予定だ。特に、高建ソウル市長とは、このような子どもたちのサッカー交流と友情を通じて、世界の平和に貢献したいと話し合っている。この大会を機に、韓国をはじめ各国との交流の輪がさらに広がることを期待している。


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外国籍市民との共生
相互理解促す架け橋≠ノ  景
開かれた「彩の国」めざす  土屋

 景 民団も次代を担う世代のために、彼らが集まる場として新会館を建築した。韓日両国民とも熱しやすく冷めやすい傾向がある。せっかくW杯で盛り上がり、イベントを成功させてもその後が尻すぼみでは困る。W杯後の具体的な計画は。

 土屋 W杯開催後も相互交流を促進するため継続したいと考えている。今年12月7日、8日の2日間、埼玉会館で韓国映画を鑑賞する機会を韓国側からいただいた。多くの県民に参加してもらい、相互理解を深めていければと思っている。

 景 両国間の相互理解を促す架け橋が在日韓国人だと自負しているが、その役割を果たすためには永住外国人の地方参政権や「国籍条項」撤廃など、基本的な政策が改善されるべきだと考える。W杯を期に、国際感覚に溢れる知事の英断が待たれるところだが…。

 土屋 埼玉県内には9万人を超える外国籍者が700万県民の一員として暮らしている。私は国籍や文化の違いにかかわらず、誰もが県民の一員として尊重されるとともに、地域の豊かさを享受できる環境づくりを進めることが重要と考え、外国籍の方々も快適でいきいきした生活を送ることができる、開かれた「彩の国」づくりを進めている。地方参政権付与については、全国3,300余の自治体と国の立法政策にも関わる事柄であり、現在、「地方選挙権付与法案」として国会に提案されているので、国会で活発な論議が展開され、国民の認識が一層深まっていくことを期待している。

 また、職員採用における国籍条項の撤廃については、外国籍者の採用機会拡大のためにも重要な課題であると考え、これまで、医師、看護婦などの専門職種を中心に撤廃努力をしてきた。

 今後も、公務員に関する基本原則を踏まえつつ、制度面、運用面でいかなる対応が可能かさらに検討を進めていきたいと考えている。

(2002.03.06 民団新聞)



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