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在日へのメッセージ

氷室興一(日本テレビ中国総局)



漸く見つけた北朝鮮難民

 中国当局の取り締まりが強まる中、東北のある都市に隠れ住む25歳の女性が危険を冒して取材に応じてくれた。

 彼女は去年8月、嫁入り資金と両親の生活費を稼ぐため、中国に住む朝鮮族の手引きで国境を越えた。50代の漢族農民に嫁がされた。朝鮮族は仲介料≠T千元(約8万円)を受け取り姿を消す。彼女は「売られた」と思ったが豊かな中国で金を稼ごうと考え直した。「ブタでさえ高級そうなエサを与えられていたから」。

 夫≠燉Dしくしてくれた。しかし言葉が通じず生活も苦しかった。嫁ぎ先が豊かに見えたのは北朝鮮が貧しすぎたからだ。去年の暮、家出する形で都市に出た。今は飲食店で働きながら時に売春している。「もう2回も堕胎した。オモニが知ったら何て言うだろう」。かくまってくれている朝鮮族アジュモニからは「避妊具を使わない客なら断りなさい、と諭された」と淡々と語る。

 瀋陽事件のことは驚くほど詳しい。韓国の衛星放送を見ているからだ。日本総領事館に駆け込んだ5人のことを心配しつつ「きっと助かる。うらやましい」とつぶやく。でも「自分は臆病だし失敗したら家族も巻き込む。だから別の方法をとりたい」そうだ。

 事件の翌日にも取締が行われた。救急車のサイレンに「誰かに密告されたのでは」と身を縮める毎日。

 彼女は最近、賄賂を払って「中国人の身分証」を入手した。「これを使って韓国人と結婚し韓国に行きたい。出来れば本物の結婚≠ェいいなあ」。ダメなら偽装でも構わない、という意味だ。

 25歳の女性の夢。余りにも切なく胸が痛んだ。

(2002.05.29 民団新聞)



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