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試金石としての「地方参政権」




 日本の政治はどこへ向かっているのでしょう。いつの間にか、「有事」が大きな顔をして永田町を闊歩しています。一部言論機関も「有事」の旗ばかり振っています。「有事」とは戦争のことです。これがどういうことであるのか、日本国民はアジアとの関係など、将来を見据えしっかりと考える必要があります。


■「有事」で「人権」後回しに

 なぜこのようなことを言うかといえば、「有事」を進めている同じ人たちが、外国人住民の地方選挙権付与に賛同している議員たちに対し、「非国民」・「国賊」と非難している現実が一方であるからです。

 歴史教科書問題や、国会議員の集団による靖国神社参拝など、日本の政治情況を見ると、世界とかけ離れた日本的事情が、民主主義とは別の顔をして急速に立ち現れているように見えます。「有事」が優先され、「人権」が後回しにされています。

 私たちは今国会で、継続審議となっている永住外国人への地方選挙権法案が一日も早く審議再開されることを願っています。この一年以上「たなざらし」の状態が続いています。この放置の状態は丁度、中国の瀋陽の日本総領事館で起こった、亡命者に対する日本当局の人権意識に欠けた冷たい対応と本質的に相通じるものがあります。

 このたびの亡命事件で、日本は「人権」を尊重しない「先進国」として、国際社会でその基本姿勢が厳しく問われましたが、実は、日本国内の永住資格を持っている外国人住民の人権確立にさえ、日本は長年にわたって消極的で、今なお理不尽な国籍差別を続けています。この閉鎖的な日本の体質、これをのり越える日本社会の仕組みが、21世紀を迎えた今こそ日本に求められており、その試金石となるのがこの永住外国人への地方選挙権付与法案と言ってもいいのです。


■外国人住民「権利」確立へ

 ところが、政治は人権と共生に鈍感なようです。

 国会議員や各政党は日本国内に住む170万の外国人住民の顔が見えているのでしょうか。何かあれば、外国人を有事と絡めて「危険」視する旧態依然たる閉鎖的体質が、今も私たちを排除し続けています。

 日本に定住している外国人住民の背後には、「世界」があります。「国際社会」があります。彼等が人権をないがしろにされ不当な扱いを受けていれば、「世界」は日本をどう見るでしょう。そういった視点が決定的に欠落しているのが、現在の日本の政治情況だと言えないでしょうか。

 この地方選挙権法案は、外国人住民の「住民としての権利」を確立する大事な法案です。私たちはもう、スローガンや合言葉としての「人権」には用がありません。法整備による具体的な「人権」保障を求めているのです。

(2002.05.29 民団新聞)



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