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韓日合同企画演劇「その河をこえて、5月」

日本側演出家・平田オリザさん



異文化交流に焦点
「両国の現在」を浮き彫り

 日韓国民交流年の記念事業の一つとして、両国のスタッフ、キャストによる合同企画演劇「その河をこえて、5月」が6月3日から13日まで新国立劇場(東京・初台)で上演される。28、29の両日にはソウルの芸術の殿堂でも演じられる。この作品の執筆と演出を手がけた日本側スタッフが平田オリザ(39)さんだ。

 舞台は2002年春、ソウル・漢江の河原。韓国語学校の教師一家が、様々なタイプの日本人生徒とピクニックに繰り出す。言葉が通じない状況の中での人間関係や「日韓の現在」が浮かび上がってくる。「舞台全体を通して異文化コミュニケーションのおもしろさと難しさの両方が出てくればいい」と平田さん。

 俳優とはいえ、日本人と韓国人では話すペースや感情表現の強弱などが違う。しかし、相手に気持ちを伝えようとして言葉が飛び交う模様は、この舞台の魅力の一つだ。

 つたなくてもいきいきとした日本語と韓国語の調和は、室内楽のように美しく、世界中どこを探しても見られなかった舞台になる、と充分な手応えを感じている。

 登場人物の中には在日韓国人の役もある。「日本はこれから多元化の社会、多文化の国にしていかなくてはならない。日本社会がもう一度活力を持つために『在日』の文化と『在日』の視点で日本と韓国の関係を語ること、これらはともに重要な役割を果たす」と語る。

 国際基督教大学1年在学中に結成した劇団「青年団」は今年で20周年を迎える。演劇を始めた一番大きな理由は、日本語に興味があったからだ。

 「日本語をきちんと知るためには、英語や仏語との比較だけではなく、近い構造をもった韓国語を勉強した方が、より深く日本語がどういうものかがわかる」。

 1984年、交換留学生として韓国・延世大学で1年間学んだ。

 「韓国とつきあう、韓国のことを学ぶということは、日本人がどう生きているか、どのように暮らしているか、話しているか、を意識させてくれる。そこが一番の魅力かもしれない」

 韓国と真摯に向き合ってきた平田さんが、韓国演劇人と体当たりで取り組んだ新作が楽しみだ。

(2002.05.29 民団新聞)



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