民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
「和合」促進の契機に

民団・総連双方代表「食事会」で確認しあう



大韓赤十字社釜山支社の
金一煕会長を中心に握手する
崔萬斗・民団中央本部副団長(左)と
具快萬・在日本朝鮮人体育連合会顧問

「在日同胞参観団」
「もどかしさ超えて」

 「2002ワールドカップ在日同胞参観団」は4日、釜山での対ポーランド戦に先立ち、釜山コモドホテルで昼食会を開いた。民団、総連から80人ずつ参加し、韓国チームの悲願の1勝に向けて士気を高めた。

 史上初めて民団と総連同胞が一緒に韓国を訪問した今回の参観団について、民団側代表の中央本部の崔萬斗副団長は「中央本部単位の共同事業としては『6・15宣言』以降初めてであり、91年の世界卓球選手権千葉大会以来11年ぶりの画期的な事業」だと強調し、「今大会が韓日両国の紐帯を強化する大きな役割を果たすと同時に、在日同胞社会の和合促進にも大きな契機になることを期待する」とあいさつした。

 総連側代表の在日本朝鮮人体育連合会の具快萬顧問は「同胞の情愛を感じている。南北共同宣言以降、日本でも和合が進展しているが、日本で生活していても民族性を堅持し、祖国の統一に積極寄与したい」と述べた。

 釜山市からは企画管理室の許南植室長が臨席し、「400万市民を代表して参観団を歓迎する。民団はソウル五輪に540億ウォンを寄付して大会の成功に寄与するなど、国民をまとめる役割や祖国平和統一の契機づくりの役割を率先してきた。今回のW杯にも在日同胞の和合の場をつくった」と評価しながら、韓国チームの16強入りと9月29日から始まるアジア大会への在日同胞の参観にも期待を込めた。

 大韓赤十字社釜山支社の金一煕会長は、「人道的な立場から北韓を支援してきたが、在日同胞の交流はすばらしい」と述べた後、乾杯の音頭で食事会が始まった。メインテーブルでは、崔副団長と具顧問らが歓談した。

 崔副団長は、「同じく日本で苦労している在日同胞が、なかなか同席できなかったこれまでのもどかしさを超えて、これからは仲良くしていきたい」と重ねて和合を強調した。

 3日に釜山入りした総連同胞80人は、古都・慶州の教育文化会館に宿泊。民団同胞との食事会に同席した後、韓国チームの試合をともに観戦し、5日にセマウル号でソウルに上がり、景福宮、博物館、民俗村などを観光、7日に日本に戻る予定だ。

 民団中央本部の河政男組織局長、総連中央本部の朴一統一運動局長名で交わされた文書で「同胞参観団」は韓国での第一歩を踏んだ。在日同胞の新しい歴史の1ページが開かれた。


韓国チームの勝利を喜ぶ。
写真左から金愛民・
女性同盟大阪府本部委員長、
余玉善・前婦人会大阪府本部会長、
金昌植・民団大阪府本部団長、
呉秀珍・総連大阪府本部委員長

■□■□■□
民団総連・大阪府本部の「訪韓団」両トップがっちり握手
対ポーランド戦韓国勝利の瞬間

 民団大阪府本部(金昌植団長)と朝鮮総連大阪府本部(呉秀珍委員長)が交わした「南北相互訪問」の約束が、4日の「釜山答礼」で実を結んだ。

 両組織からそれぞれ5人ずつ、10人の幹部はこの日、韓国対ポーランド戦を観戦し、勝利の瞬間には両トップががっちり握手、前婦人会大阪府本部の余玉善会長(現中央本部副会長)と在日本朝鮮人女性同盟大阪府本部の金愛民委員長は抱き合って喜びを爆発させていた。万歳三唱の輪の中には、民団府本部の趙南富議長、金清正副団長、朴英哲事務局長ら、総連府本部の金憲信副委員長、金政義国際部長、生野西支部の梁光政委員長の姿があった。

 前半を終わってハーフタイム時。呉委員長は「60年ぶりの(南の)祖国だが、まったく違和感がない。訪韓のために金団長らの努力と暖かい受け入れがうれしい。今後も和合と交流のためにともに努力をしなければならない」と語った。

 追加点が入った後半、一行は勝利を確信したのか、座っての応援からチャンスのたびに立ち上がる場面が増えた。表情から緊張感が取れた模様だった。

 試合後、金団長は「これ以上の喜びはない。総連の人たちが一緒に応援してくれて本当によかった」と上気しながらもホッとした表情を見せた。呉委員長は「韓国チームが最初の試合で勝利したことは、大会を成功させる上で非常に大きい。おめでとう。」とかみしめるように思いを伝えた。

 昨年3月25日に開かれた大阪在住の同胞と日本人との共生の祝祭「大阪ハナ・マトゥリ」以降、両組織は和合と交流を急速に深めてきた。今年3月、南北祖国の相互訪問に合意し、金団長らがまず「アリラン祭」の参観のため、4月27日から6日間、平穣などを訪問した。

 その答礼として構成された今回の「訪韓団」は、2日にソウル入りし、景福宮などを観光、南北軍事境界線近くの都羅展望台を視察した後、慶州を経由して釜山で新しい歴史の始まりを目の当たりにした。


釜山コモドホテルでの
「在日同胞参観団」食事会(4日)

■□■□■□
同胞間交流・和合の流れは誰も止めることはできぬ
「参観団」随行して

 「祖国で開かれるサッカーのワールドカップをともに参観しよう」。

 在日本大韓民国民団(韓国民団=金宰淑中央本部団長)の呼びかけに、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連=徐萬述中央本部議長)が応じて「2002ワールドカップ在日同胞参観団」が実現した。両組織が一つの団体を構成して訪韓し、行動をともにするのは、史上初めてのことだ。

 4日、韓国チームの初戦となる対ポーランド戦(釜山)には、「同胞参観団」の500余人が競技場の一角に陣取った。総連同胞は80人で、ほとんどが初めての訪韓だという。

 5万余の大観衆が埋めた競技場は、赤一色で染められ、試合前から「テーハンミングッ」の大声援で揺れた。両国選手がピッチに現れ、両国大統領も観戦に訪れるなか、愛国歌が流れる。テンションがどんどん高まっていく。

 期待が膨れあがる一方で、FIFAランキングではポーランドよりも下位の韓国が地の利を生かせるかどうか、不安をかき消すことができない。

 韓国はワールドカップに過去5回の出場を果たすも、1勝すらできなかった。世界の壁は「アジアの虎」の名前を欲しいままにしてきたチームを「井の中の蛙」にしてきた。

 しかしこの日、「同胞参観団」は、12番目のプレーヤーと言われるサポーターの中に身を置き、声もかれよと選手らを必死に後押しした。そして、48年目にして初めての勝利の喜びにともに浸った。

 「悲願の1勝。その歴史的な瞬間に立ち会うことができてよかった」。総連同胞が素直な気持ちを吐露した。「ゆっくりまた韓国に来たい」とも言った。

 「同胞参観団」は韓国チームが出場する予選リーグ3試合にそれぞれ500人、合計1500人規模で観戦する。総連同胞は10日の対米国戦(大邱)に114人、14日の対ポルトガル戦(仁川)に70人、3試合合計で264人が、民団が便宜を図ったチケットで熱戦を体感する。

 「参観団」以外にも、在日本大韓体育会が前回のフランス大会時に結成した在日同胞と日本人による「ふれあいKJ共同応援団」や、民団と総連の両大阪府本部が、交流を重ねてきた末の釜山での共同参観も実を結んだ。これらは韓日共催だからこそできた韓・日・そして「在日」の南北交流のあるべき姿と言える。

 ワールドカップを機に、在日同胞社会の和解と団結のため、互いの信頼構築の契機となるようにしたいと、民団中央本部では5月以降、4回にわたって総連中央本部と協議を重ねてきた。意見の食い違いがなかった訳ではない。

 しかし、「雨降って地固まる」という言葉のように、もはや同胞間の交流・和合の大きな流れを誰も止めることはできないはずだ。自ら壁をつくる必要もない。在日同胞は自らの主体性で、在日同胞社会の舵取りをする時期に来ている。そんな思いを痛感させられた釜山の夜だった。

(「哲恩宣伝局長)

(2002.06.05 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ