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「常設型」で初・直接請求権も

永住外国人に住民投票権



愛知・高浜市
条例改正案を可決

 【愛知】「常設型」の住民投票条例に永住外国人の直接請求権や投票権を盛り込んだ高浜市住民投票条例「全部改正案」が、24日の6月市議会定例会本会議で可決された。全国の自治体で初めてのケース。地方自治への永住外国人の参加をさらに広げていくうえで弾みがつきそうだ。

 改正案は、現行の投票資格者を「公職選挙法第9条第2項に規定する高浜市の議会の議員及び長の選挙権を有するもの」と規定していたものを「年齢満18年以上」の「日本国籍者」、および「永住外国人」で「引き続き3月以上高浜市に住所を有する者」に変更した。

 また、投票資格者の範囲の拡大に伴い満18歳以上であれば日本人同様、永住外国人にも住民投票の請求権を認めている。

 住民投票で永住外国人の参加を認めたのは滋賀県米原町が全国で初のケースだったが、近隣の市町との合併問題に限った「目的型」だった。

 これに対して、高浜市は一定の要件を満たせば議決を経ずに実施できる全国初の「常設型」住民投票条例を持つ。同市内の永住外国人は地域の将来のあり方を決める機会にいつでも日本人と同じ1票を行使できるようになる。

 また、「市政の重要事項」については、有権者の3分の1以上の住民から署名を集めれば、条例の制定に向けて市議会に直接請求することも可能になった。


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市長動かした1通の手紙

 市の総務課担当者によれば、「常設型」住民投票条例に永住外国人を含めるきっかけをつくったのは一昨年12月、市内に住む在日韓国人から届いた手紙だったという。手紙には「市政を傍観せず、責任をもって協調したい。私たち在日コリアンも参加させてほしい」旨がしたためられていた。手紙を読んだ森貞述(さだのり)市長は心を動かされ、「永住外国人に認めるならば年齢も含めて検討しよう」となった。

 森市長は永住外国人に投票資格を認めたことについて13日、定例市議会で質問を受け、「住民の総意でまちづくりを目指すもの」と答えた。また、投票資格を20歳から18歳以上に引き下げたことについては、「18歳以上は大人と見みる時代の方向性のなかで提案した」と述べた。

 市選挙管理委員会によれば2日現在、20歳以上の有権者は2万9245人だが、年齢要件を18歳以上に引き下げると、投票できる人は約940人増える見通しだという。

 永住外国人の資格者は268人。9月1日から施行される。


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他自治体への広がりを期待
崔東佑民団愛知県本部団長の話

愛知県高浜市が「永住外国人に投票権と請求資格を認める」条例を全会一致で採択した意義は大きい。他の自治体がテーマ毎の1回限りの条例であるのに比べ、高浜市の場合は「常設型」である点でも画期的な内容となっている。

 今後ともすべての自治体が私たちの住民投票権を認めるよう運動を継続していくとともに、定住外国人の地方参政権獲得など在日同胞が地域社会に参画していくための新たな道を切り開いていきたい。


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自治体の判断で住民投票権の付与
国レベルの法律はなし

 日本には住民投票に関する国レベルの法律はない。住民投票に永住外国人の参加を認めるかどうかは、地方自治体にまかされている。しかし、これまで実現したのは、3月31日に投開票された滋賀県米原町が初めて。

 地方自治法第10条は、市町村に住所を有するものは、その市町村から等しくサービスを受ける権利を持つとともに税などの負担義務を負う旨定めている。永住外国人の住民投票への参加は、現行法上なんら問題がないばかりか、ごく自然なことといえる。現在、総務省では全国で3200余りある市町村を一千程度に再編することを目指している。市町村合併特例法の期限が切れる05年3月末まで、今後とも各市町村で合併意思を問う住民投票が行われるものと予想されている。

(2002.06.26 民団新聞)



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