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武力挑発のりこえ和合と交流を




 去る6月29日、韓国の西海上で勃発した南北間の銃撃戦について、韓国国防省は7日、「北韓の綿密な計画的奇襲攻撃」と発表しました。最高指導者の関与については触れていませんが、金正日国防委員長指揮下の一枚岩体制の国で、軍部の独断で暴走したと片づけるには相当無理があります。


■W杯共催成功に横やり

 南北双方に死傷者を出したこの事態は、サッカー・ワールドカップ(W杯)という世界規模のスポーツ祭典が大詰めを迎え、韓国代表チームが3位決定戦に臨む日に起きました。沸点に達した韓国民の期待に冷水を浴びせ、韓日両国が史上初の共催成功を手中にする直前に横やりを入れたわけです。

 なぜこの時期を選んだのか、目的は何なのかについては、さらなる解明を待つしかありませんが、次のような推測がなりたちます。

 かつて北韓はソウル五輪の開催時期に合わせ、朝鮮総連を担ぎ出して「世界青少年祝典」を強行しました。しかし、赤字決算で経済は一段と疲弊し、餓死者まで出す食糧難に拍車をかけたのは周知の事実です。にもかかわらず、今回のW杯にも「アリラン祝祭」をぶつけてきました。

 一事が万事。このようななりふりかまわない北韓の対抗措置を見る時、分断祖国の南側のみ華やかなスポットライトが当たるのは承服できないという意思表示以外何物でもないと言わざるをえません。同族の情愛などみじんもないことは明らかです。

 さらに、中国・瀋陽の日本領事館に端を発した脱北同胞の問題が、その後他地域にも拡散し、威信を失った北韓当局が国内引き締めのために、「強盛大国」の強面ぶりを見せたのではないか、というふうにも受け取れます。


■揺らぎのない対北政策

 ベールに包まれた北韓の為政者を世界の表舞台に登場させ、歴史的な「6・15南北共同宣言」発表にこぎつけてからまだ2年しか経過していません。合意を一方的に踏みにじった北韓に対する怒りが、金大中政権の「太陽政策」に一時的に向けられることはやむをえないでしょう。

 しかし、「目には目を」という感情に根ざした強硬論は、せっかく築き始めた南北和合・交流の大道を閉ざすものでしかありません。韓国は9月の釜山アジア大会を経て年末には大統領選挙が控えています。いくら政権末期のレイムダック状態とはいえ、対北政策の根幹が政争の具になるようなことがあれば、それは国の命運をも左右するゆゆしき問題になりかねません。

 同様に、本国の緊張状態を在日同胞社会に持ち込まない冷静さが、私たちに求められているのは言うまでもありません。南北統一へのサイは投げられました。北韓がしかけた武力挑発に乗らない忍耐が、切れかけた関係を紡ぐ糸なのです。

(2002.07.17 民団新聞)



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