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韓国体験20年の集大成

「ソウルの達人=最新版」の著者・黒田福美さん



黒田福美さん

韓国歴史問題にも一石投じる

 たくさんの人がこの本を持って楽しい旅ができるように―。芸能界きっての韓国通として知られる女優でエッセイストの黒田福美さんが、取材から編集作業まで手がけた「ソウルの達人―最新版」が刊行された。本書ではこの間、見続けてきた韓国へ対するさまざまな思いが随所に込められている。

 韓国に携わって足かけ20年。この間、直接見て、歩いた韓国の街。その集大成として「自分だけにできる仕事がしたい」と全面改訂した「ソウルの達人―最新版」には、現地の人でも知らない穴場や、面白いスポットなどの情報が満載されている。「ソウル…」シリーズの3冊目。

 これまで韓国に住んだ経験はない。一度韓国で暮らし、そこから情報を発信したいと一昨年12月から韓国に家を借り、東京との2重生活を送る。 半年間をかけた取材は、現地に住む利点を生かしながら1つひとつの素材をこれまで以上に丹念に行った。

 「コルモク」と呼ばれる食や韓服、レコードなどを扱う専門店街や、伝統を守る韓国工芸の巨匠など、こだわり抜いて選定したスポットには背景や由来などが書き記され、「知ることの喜び」を満たしてくれるガイドブックとなった。

 「韓国旅行ではいろいろなことをしたい人がいると思う。さまざまな切り口で楽しみ方を提供した本です」

◇  ◆  ◇

 「この本に込めた1番のメッセージ」と話すのが、第2次大戦の沖縄戦で戦死した韓国出身者の創氏改名前の本名を調査する洪鍾n・明知大学史学科教授との対談だ。

 洪教授は沖縄県からの依頼を受けて95年から1次調査を開始。調査は日本の戸籍に記された本籍地をもとに、韓国の戸籍を調べるという地道な作業が行われる。歴史の中に埋没したまま光も当たらず、葬られようとしている戦争被害者がいる。「在日の問題もそうだし、歴史のことで私たちが知らなければならないことがあった」と胸の内を語る。

 洪教授のこれまでの活動を紹介することで、それに共感した人たちに韓日関係について考えてほしいと念願する。

 今、日本人と韓国人が理解を深め、仲良くなってきたからこそ、歴史問題などにも目を向けていきたいという。

◇  ◆  ◇

 取材中、タプコル公園で日本語の通訳ボランティアをしている人たちに出会った。抗日運動で亡くなった遺族たちだ。「これからは歴史を正しく認識して、お互いに助け合っていく時代」と語る人がいた。この言葉を聞いて日本人としてありがたいと思った。

 将来の両国関係について明るい手応えを感じている。日本での韓国旅行は依然と人気が高い。先月閉幕したW杯大会でも、韓日のサポーターが力を合わせて両国チームを応援する「ふれあいコリア・ジャパン共同応援団」で、韓国人と日本人が一丸となった。

 「彼らはサッカーというワードでつながっています。お互いに好感を持ったうえで、歴史を振り返ることがあればもっといい」

 これまで以上に韓国の情報を得る機会が増えている。「楽しいことが沢山あるということが露出してきて、相当の評価を得る国になったことが嬉しい」。新たに取り組みたいテーマもある。今後も韓国との関係は深まっていきそうだ。

(2002.07.17 民団新聞)



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