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慎武宏の韓国サッカーレポート

<アジアの虎の鼓動>自信と経験と誇り

 

貴重な財産糧に一層発展を… 本当のスタートはこれから

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Kリーグ大盛況 史上最多の観客

 

ベスト4という大活躍を見せた「ヒディンクKOREA」

全国が赤い熱狂で沸いたワールドカップが終わっても、韓国はサッカー熱で盛り上がっている。

 韓国国内の新聞やテレビなどではサッカーの話題が今でも大きく取り上げられ、7月7日にスタートしたKリーグも大盛況。いきなり12万3189人(4会場合計)という史上最多の観客動員を記録し、10日にはこれまで苦戦してきた平日開催でも超満員となった。また、翌節の13、14日には梅雨の降雨にもかかわらず定員オーバーの会場が続出し、13万8474人を記録し、最多記録を更新した。

 ただ、それも無理はない。何しろ韓国は、悲願の1勝と決勝トーナメント進出という当初の目標を達成したばかりか、アジア初となるW杯ベスト4進出の快挙をなし遂げたのだ。その躍進が、韓国のサッカー人気に直結していると見て、間違いないだろう。

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スリルとドラマ欧州列強を連破

 それにしても、韓国代表のW杯は文字通り、劇的だった。

 ポーランド、アメリカ、ポルトガルという強豪揃いがゆえに予選敗退も危惧されたグループリーグを堂々の1位で突破。しかも、イタリアをゴールデンゴールで下し、スペインにはPK戦勝利を収めてのベスト4進出である。スリルとドラマの連続だったと言ってもいいだろう。その韓国躍進の要因として真先に挙げられるのは、フース・ヒディンク監督の存在である。

 ヒディンク就任からW杯開幕までの1年半の間で、韓国は32回のテストマッチを行ったが、その超実戦主義の強化方針のもとで鍛えられた選手たちは、長年苦しんできた欧州コンプレックスを完全払拭し、精神的にも肉体的にも完全武装されていた。そうした成果なしに、ポーランド、ポルトガル、イタリア、スペインという欧州列強を連破することはできなかっただろう。

 しかも、ヒディンクは今年1月から科学的トレーニングを導入して韓国選手のフィジカルレベルを高めたばかりか、韓国が本来持っていた激しさを、その攻撃的采配で存分に引き出した。その象徴がゴールデンゴールで勝利をもぎ取ったイタリア戦であり、2試合連続の延長戦という体力的ハンディをものともせずにPK戦勝利を収めたスペイン戦だったのだ。

 同時に、試合を重ねるごとに選手たちが自信を積み重ねていったことも大きかった。

 もともとW杯開幕前から、選手たちは手応えを実感していたようだが、ポルトガルを下して決勝トーナメント進出を決めたことでその自信が確信になったという。

 「こうなったらいけるところまで進みたい」と語ったのはボランチとして大活躍した金南一だ。猛烈な冒険心を抑えきれないほどだったのだ。

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空前絶後赤い熱狂≠ノ応えて

スタンドをはじめ、全国の街頭が赤で染まった

 そして、その自信と冒険心の支えとなっていたのが、全国各地が熱く、激しく燃えた、空前絶後の赤い熱狂である。「その声援が負担になったときもあったが、決勝トーナメント進出後は大きな力になった」と主将の洪明甫も言っている。

 「テレビに映し出されたソウル市庁舎前の赤い群衆を見たとき、それこそ涙が出る思いだった。あの大声援に応えるために、自分たちは何をすべきなのか。選手たちで集まっては何度も何度も話し合った。結論はひとつ。勝って報いるしかない。たとえ劣勢に立たされても、最後の最後まで諦めずに全力を尽くそうと誓い合った」。

 使命感や愛国心という言葉だけでは語り尽くせない覚悟。そこには、私利私欲はおろか、W杯を自己アピールの場にしようとの色気も存在しない。あるのは国民の期待に応えたいという一途な思い。それが彼らを突き動かす原動力になっていたのだ。

 

サポーターには太極旗をまとったファッションも見られた

そして、そんな強いハートがあったからこそ、彼らは国の威信を賭けた戦い≠ニされるW杯で好成績を残せたのである。その快進撃には誤審≠フレッテルがついて回っているが、韓国代表の誇り高き戦いぶりは、間違いなく見る者の魂を揺さぶり、胸を打った。大会ベストチームのひとつと言っても過言ではないだろう。

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国内リーグの活性化に注力

 ただ、その韓国サッカーの躍進を今後も続けるためにはさらなる対策が必要だ。韓国が強い韓国≠ナ在りつづけるには、ユースの育成強化、指導者教育の充実、スタジアムの事後活用などの基盤整備に力を入れていく必要がある。

 とりわけ代表の集中強化に気を取られて蔑ろにしてきたKリーグの活性化は急課題である。というのも、その国のプロリーグの繁栄なくして代表チームの成功はありえないのだ。そういう意味では、開幕したばかりのKリーグの活況ぶりは喜ばしい限りだが、熱しやすく冷めやすい≠ニいう韓国人の国民気質も忘れてはならない。

 つまり、今のサッカー人気を持続させることが、韓国サッカーの次なる栄光につながっていくのだ。

 今大会を通じて、自信と経験と誇りを手にした韓国サッカー。その貴重な財産を糧に、今後どのような発展を遂げていくのだろうか。躍動するアジアの虎≠ノ、これからも目が離せない。

(スポーツライター)

(2002.07.17 民団新聞)



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