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無年金救済「試案」に欠ける視点




 坂口力厚生労働相は今月に入って、定住外国人を含むすべての「無年金障害者」の早期救済を図るとした独自の「試案」を発表しました。その内容とは、現行の拠出制年金制度に影響を与えない範囲内で、かつ旧障害福祉年金の額などを勘案しながら特例として福祉的措置をとるというものです。


■高齢者にも福祉的措置を

 坂口厚労相が7月の段階で明らかにした当初「案」では、任意加入で国民年金に加入せず、無年金状態に置かれた91年4月以前に学生だった障害者約4千人に限って障害基礎年金の半額程度を一般財源から支給するというものでした。それだけに今回、福祉的措置をとる対象として学生やサラリーマンンの主婦のほか、全国で約5千人と推定される定住外国人も含めたことは大きな前進であり、歓迎したいと思います。というのは、現役の閣僚がこの問題でここまで具体的な解決の道筋を示したことはこれまでなかったからです。

 民団としては、定住外国人障害者の救済も念頭に置いた今回の「試案」を評価しつつも、福祉的措置をとろうとする対象に定住外国人の高齢者を含めなかったことが残念でなりません。

 坂口厚相は無年金障害者を対象とした今回の試案で、「政策移行期であったが故に(国の周知徹底などが十分でなく、無年金となる事態が)発生した側面を否定できない」ことを理由にあげています。


■経過措置とらずいまだ放置

 しかし、定住外国人は、障害者ばかりか高齢者も、59年の国民年金制度発足当初から経過措置もなく、制度的に排除されてきました。これは、厚労相のいうような周知徹底不足からではなく、国による差別的政策によるものです。定住外国人の無年金者は、日本人の高齢者ならば受給できた老齢福祉年金(全額国庫負担)の受給も一切認められず、非常に苦しい生活の中に身を置いているのが現状です。

 障害者だけに限定した今回の福祉的措置は、定住外国人を含めたこと自体は評価されますが、さらに加えて同じ制度的無年金者である高齢者に対する救済措置も望みます。

 なぜなら、72年の沖縄本土復帰の際には制度が施行できなかった約10年間を保険料免除期間とするなどの措置がとられているからです。

 本来であれば59年の国民年金制度創設時、あるいは82年の国籍条項撤廃時に日本人と同様に定住外国人に対しても経過措置をとるべきであったと思います。

 私たちはこうした在日韓国・朝鮮人に対する生活実態調査とあわせ、無金障害者同様、86年4月1日の時点で60歳を超えていたという理由で老齢福祉年金(86年から老齢基礎年金に変更)受給を認められていない無年金定住外国人に対する救済措置を含めた法整備を望みます。

(2002.08.21 民団新聞)



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