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坂口試案では「不十分」

同胞無年金障害者



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「経過措置が急務」 同胞・市民団体が指摘

 【大阪】定住外国人を含むすべての無年金障害者に福祉的措置をとるとした坂口力厚生労働相の試案に対し、同胞市民団体から「まだ不十分」との声があがっている。まず、高齢者に対する視点の欠如。なによりも、経過措置をとらず障害者・高齢者を年金支給対象から除外してきたことに対する責任が抜け落ちていると指摘する声も強かった。

 京都地裁での在日同胞7人を原告とする障害基礎年金訴訟を支援している「在日外国人『障害者』の年金訴訟を支える会」(共同代表、仲尾宏・慎英弘)は、今回の坂口試案について、「無年金問題を具体的な政治課題にした」ことは「画期的な意義」と評価した。

 ただし、国民年金制度の発足時から定住外国人を排除し、82年の法改正では国籍要件が撤廃しながら経過措置をとらず、当時20歳の障害者と満60以上の高齢者を年金支給の対象から除外してきた国の責任について「反省がまったくない」と指摘している。

 その端的な例が今回、無年金高齢者を無視したことだという。

 また、無年金障害者に福祉的措置がとられたとしても、これまで保険料を拠出してこなかったため、実際に支払われる給付金は制約されると「試案」が示唆していることについては、「拠出制と無拠出制の違いをあえて無視する暴論」と提起した。なぜなら、20歳以前に障害を持ち20歳になって支給される障害基礎年金(旧障害福祉年金)は無拠出制であって、保険料の拠出の有無を理由に給付額に差を付ける根拠にはならないからだ。


◆坂口試案とは

 年金制度に加入せず、障害者になっても年金給付を受けられない人たちを一括救済しようというもの。対象は外国籍者約5000人任意加入の時代に加入せず障害を負ったサラリーマン、公務員の妻など約2万人同じく学生約4000人失業などのため失効した約9万1000人の計約12万人。

 ただし、施設入所者は除き所得制限も付く。障害は1、2級に限定。給付にあたっては拠出制の年金制度に重大な影響を与えるとして給付額や給付水準を低く押さえる方針。一説には約4万円程度ともいわれる。無年金障害者の生活実態調査を実施、無年金障害者への対応を開始するという。


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「年金制度の完全撤廃を」 早期解決求め集会

 【大阪】「年金制度の完全撤廃させる全国連絡会」(李幸宏代表)など5団体は、「在日外国人の無年金問題の早期解決を」求める大阪集会を19日、市内のビィアーレ大阪で開いた。

 席上、李代表は「制度的無年金者と、掛け金をかけていなかったために障害を持った人たちを一律にしたのは釈然としない。中でも、いちばん辛酸をなめてきた76歳以上の高齢者が何ら法的救済を受けることなく、亡くなっていくことを思うと許せない」と強調した。

 同じく、主催団体を代表して「在日コリアン高齢者福祉を進める会」の中山徹共同代表も「大阪市内には定住外国人の無年金者が、約4000人もいる。日本人と同じように年金を出すべきだ」と述べた。なお、集会に先立って主催団体代表は大阪府と大阪市を訪れ、外国籍の高齢者に対する給付金の引き上げなどを要請した。

(2002.08.28 民団新聞)



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