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1府7県53市区町村で

「教育指針」策定



課題は現場の実践
予算措置も不可欠

 「在日外国人教育基本方針(指針)」を策定した教育委員会が、関西圏を中心に着実な広がりを見せている。「全国在日朝鮮人(外国人)教育研究協議会」(藤原史朗会長)の最新の調査によれば、すでに1府7県53市区町村に及んでいた。ただし、一部の地域では「せっかくの方針(指針)が現場に十分浸透していないのでは」と指摘する声も出ている。

 「策定された在日外国人教育基本方針(指針)」は該当する教育現場で「法律(規約)」に準じる拘束力を持つとされる。具体的には、第一に在日韓国・朝鮮人をはじめとする在日外国人のアイデンティティの保障をうたい、各自の違いをあたりまえに認めあえるよう、差別と排外を産み出す土壌そのものを根本から変えていくとうたっているのが共通。

 大阪市が全国に先駆け70年に「外国人教育〔学校教育指針中に〕在日朝鮮人問題に関する教育指針」を策定して以来、都道府県レベルでは大阪、兵庫、奈良、滋賀、広島、神奈川、三重、福岡へと広がってきた。

 大阪では36市町村がすでに策定済みであり、最も浸透しているといえよう。これは民団大阪府本部(金昌植団長)が「本名問題を前面に打ち出しながら長年、行政交渉の席で強く押してきた」成果の表れでもある。同本部によれば「それまで止まっていたところが序々に策定されていった経緯がある」という。

 一方、「在日外国人教育基本方針(指針)」が現場でどれだけ浸透しているのかを見ると、地域によってバラツキがあるようだ。これはひとえに現場の教員が「方針(指針)」を活かす努力をしているかどうか、または実践できる教師が育っているかどうかにかかっているという。

 高槻市で30年間にわたり「多文化共生社会」の実現に向け取り組んできた李敬宰さん(「高槻むくげの会」会長)も「形こそ広がっているが、実践する教師が育っていない。教育委員会が『指針』に則って現場を指導していくしかないのでは」と注文を付けた。

 墨田区が96年に「在日外国人児童生徒にかかわる指導資料(主として在日韓国・朝鮮人児童生徒の指導について)」を発表するにあたって、そのきっかけをつくった在日2世の金早子さんも、「墨田区でも現場に浸透しているとは思えない。これは先生になんとかしようという力量がないから」と感じているという。

 こうした指摘に「全国在日朝鮮人(外国人)教育研究協議会」の藤原会長は「在日外国人教育基本方針(指針)はただの文字であり、肉付けができていない。現場の実践と教育行政の予算的措置が不可欠であり、両方そろわないと張り子の虎に終わってしまう」と話している。

(2002.09.18 民団新聞)



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