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「在日」への視点深まる

第39回在日韓国人教育者研究大会から



「土曜学校」全国化へ
「民団部会」で本格的論議

 民族学校の教師と韓国政府から派遣されている韓国教育院担当者によって8月28日から3日間にわたって開かれた教育者研究大会は、特にオリニのための「土曜学校」全国化に向けた論議が深められた。

 今年は名古屋韓国学校(権泰殷理事長・尹大辰校長)主管で開催された同大会は、民団関係者が多数集い、真摯な雰囲気に包まれた。

 本大会は、民族教育に携わる専門家達の集いであり、全国レベルで集う唯一の場だ。教師の実践の結果と課題の克服をめざす情報交換の場であり、実力研鑽の場でもあった。しかし近年、参加者の関心低下や効果面への疑問などさまざまな不協和音が指摘され、大会の在り方が問われていたもの事実だ。その一方、在日同胞子弟の90%が日本の公教育の場に学ぶ現実にあって、オリニの民族的自覚と健やかな成長を願う親からは、教育専門家の取り組みに期待と関心も寄せられていた。

 ここ数年、主管を担当した白頭学院、東京韓国学校、そして福岡韓国総合教育院は、大会の充実化に向けてさまざまな努力を重ねてきた。今年は事前に関係者が集い、さらに一歩突っ込んだ論議を重ねた。その結果、民族教育を受ける当事者の意識と価値観について認識を深め、現在進めなければならない事業とされている「オリニ土曜学校」の全国化に向けて、集中的な論議が交わされた。

 従来の大会は、正規民族学校(東京・京都・白頭・金剛)教師による「学校教育」部会と韓国教育院の派遣教師による「社会教育」部会に分かれて行われてきた。今回は、民団の要請を受け、社会教育部会を2つに分けて民団部会を新設し、3部会となった。

 民団部会の設置は、大会が教育の「専門家」の集いから「関係者」の集いへと質的に変化したことを意味する。とりもなおさず、民族教育を教師に一任してきた時代から、保護者と組織関係者が一丸となって取り組まなければならない時代へと変化したといえる。

 土曜学校に焦点を絞った本大会の成果のひとつは、教育を施す側と受ける側の姿勢の違いに焦点を置いた点である。ともすれば教師の側だけの一方的な成果だけが強調されがちな発表から、教育を受ける側の意識動向に視点を移そうとしたことである。

 全体講演のひとつとして行われた静岡文化芸術大学の李孝徳助教授の「在日社会の現状と未来」と題した報告がその現れだ。在日同胞の多様性と意識構造の変遷を的確に指摘し、今後の在日同胞の民族教育のあり方に方向性を示したことが特筆される。

 次にあげる成果は、民団分科会に参加した12地方本部の関係者50余人が「土曜学校」の開設に向けて忌憚なく、真摯に意見を交わした点である。分科会では、まず近畿の公立学校を中心に取り組まれている「民族学級」について、民族講師連絡会の金光敏事務局長が、理論的背景と意義、そして現状について報告した。続いて、東京韓国学校の土曜学校に携わって来た李和枝先生が、その成果を紹介した。さらには、開設にあたっての困難さや試行錯誤の結果を洪性豪氏(前東京韓国学校教頭)が報告した。3つの報告をもとに、各地方での具体的な取り組みについてより深い意見交換が行われた。土曜学校の必要性を共感し、推進にあたっての留意事項を確認できた点は大きい。

 また、大阪府・市自治体交渉に携わってきた民団大阪府本部の鄭炳采文教副部長が「外国人教育指針の策定に向けての要望活動」をテーマに、地域社会への積極的なアプローチと自治体交渉の理論的根拠と背景、その取組要領を詳しく説明した。日本社会に向けての取り組みも、大会の新たな視点といえるだろう。

 民団中央本部文教局は、昨年から実施している「オリニ・ジャンボリー」と「土曜学校の全国化」に向けて、今大会の意義は大きかったとし、土曜学校を含め、新たなオリニ事業の実施に取り組むとしている。

(2002.09.25 民団新聞)



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