民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
オリニの未来見つめて<2>
各地の保護者・オリニ会の動き

滋賀・ハムケ・モイジャ
民族軸に親子で集う


 在日同胞女性と結婚した北川博司さん(39)には、小三の女の子、二歳の男の子がいる。韓日の二つの民族を背負うわが子を称して「ダブルのソフトクリーム」。子どもたちは韓国籍で、生まれた時から奥さんの金姓を名のっている。

 わが子を見つめる周囲の日本人は「朝鮮人と言ったらいけないんじゃないか」と思っているようだ。勤務先の近江八幡市福祉事務所の近くには、「朝鮮人街道」と呼ばれる地名が残っているが、「差別用語ではないか」と指摘する人もいた。

 朝鮮という言葉がなぜ差別につながるのか。

 「日本人の心の奥底に朝鮮人に対するマイナスイメージがあるからだ」と北川さん。そのような日本の土壌が、在日同胞の親に不安を抱かせる。子どもたちは日本の教育現場できちんと受け入れられるかどうか。

 民族を否定されるということは、自分の親まで否定することになる。親を否定する子どもにならないように橋渡しをするのが、自分たちの役目だと思った北川さんらは、96年3月に「ハムケ・モイヂャ(一緒に集まろう)」という会を発足した。保護者と子どもたちが集まる「場」だ。

 当面の目標を教育指針の策定に置き、九五年七月に教師らが設立した「在日外国人の教育を考える会・滋賀」とともに行政交渉を始めた。北川さんは「考える会」の事務局次長を務める。そして、97年5月に滋賀県は指導指針を定めた。今後は指針に盛られた内容を学校の教育現場で具体化することだ。

 日常の活動は一学期に一度集まり、親たちの悩みを聞いたり、意見を交換する。外国人児童を受け持つ担任の先生から保護者に会への参加を促す。在日同胞のオリニ、日本の子どもらと年に一度はキャンプも開く。

 当初、3人でスタートした会は、在日コリアン保護者会などの協力を得て、今では会員が60人余りに増えた。7割は在日同胞だが、「企業城下町」の地域事情を反映して、日系ブラジル人やポルトガル、中国、アメリカと多国籍化しているという。所属、団体などは問わず、民族料理の紹介など、お互いの文化に知り合えるような場になっていることの表れだ。

 会を発足する前に行った在日同胞家庭の掘り起こし作業では、「子どもが高校生になるので、帰化をしようと思っている」という家庭もあった。16歳は現行の外国人登録法(外登法)で登録証の常時携帯義務が発生する年齢だ。かつては指紋押捺も強制されていた。その年齢が一つの区切りになるのかと、悲しい思いをした。

 「在日同胞を国籍でくくるのではなくて、民族を軸に考える。国籍は違っても民族は一緒。国籍と民族を切り離して考えるのが、国際的な流れではないか」。

 親の生き方を見て子どもは育つ。子どもが困った時には支え、応援できるような会にしたい。集まることのできる場所があるということは、親や子どもたちに安心感を与える。県下を網羅する「考える会」とは、車の両輪の関係だ。担任の先生が会に関わっているというのは、子どもたちにとって大きな信頼感になっているのは言うまでもない。

 会への問い合わせは北川さんへ。電話は0748(32)1382。

(1998.5.27 民団新聞)



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