民団新聞 MINDAN
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”違い”ありのままに認めあおう

川崎市教育委員会
教員に意識改革迫る


他文化共生へ指導資料作成

 【神奈川】川崎市教育委員会は、在日韓国・朝鮮人を含む全ての外国人児童・生徒が民族的自覚と誇りを持ちうる教育環境づくりを目指して、新たな教職員用指導資料「ともに生きる―多文化共生の社会を目指して」を作成した。同刷子は、ともすると外国人教育に消極的になりがちな現場教師に意識改革を迫り、異文化尊重を訴える内容となっている。6月中に印刷を終え、市内の公立小・中・高校の教員全員に配布していく方針だ。

 新指導資料はA5判71ページ。今年に入って10年ぶりに改訂された教育基本方針にのっとり、今後どのように多文化共生教育を進めていくのかを、豊富な実践例をもとに一問一答形式で紹介している。

 まず、「川崎市の外国人教育の概要」で多文化共生教育を目指す基本的考え方を明らかにし、「在日韓国・朝鮮人教育」「外国からきた児童・生徒をめぐる教育」「外国人児童にかかわる事務取り扱い」「在日外国人教育をめぐる資料、実践例」などで構成している。

 「在日韓国・朝鮮人教育」の項では、「見えない存在」から「外国人として見える存在」にしていくことで外国人としての主体形成を図ることができると指摘、学校現場の一部に根強く残る「日本人と同様に扱っている」からよしとする風潮には「差別性に気付かなければならない」と戒めている。「ちがい」を「ちがい」として認めあうためには、学校の中で韓国・朝鮮の子どもたちが「韓国・朝鮮」に触れ合う機会を設け、アイデンティティをはぐくめる条件づくりが必要と訴えている。

 執筆したのは学校現場、校長会人権委員会、社会教育・市民館の各代表に在日韓国人の保護者、同教育委員会メンバーも加えた22人で構成する外国人教育検討委員会。同委員会は96年9月に発足して以来、外国人市民代表者会議の提言も取り入れ、月1回のペースで検討を重ねてきた。

 特に「在日韓国・朝鮮人教育」の項では、「在日韓国・朝鮮人を外国人としてとらえていないために差別が起こる。見えない存在から見える存在にしてほしい」との朴栄子さん(検討委員会メンバー)の意見がそのまま反映されている。

 同教育委員会の調査によれば、市内の在日韓国・朝鮮人児童・生徒の本名使用率は25%未満。さらに本名使用率を高めるために、同教育委員会では「民族文化講師ふれあい事業」を導入している。これは各学校で民族文化講師を招待して展開する学習活動を奨励するもので、97年5月から始まった。また、指導資料と同時に作成が進んでいる外国人保護者用就学ハンドブック(B5判12ページ)でも在日韓国・朝鮮人保護者に本名就学を勧める一項を設けている。

 川崎市内の公立学校に在席する外国人児童生徒数は9万453人中772人(二重国籍を含む、97年調査結果)で、全体の0・9%を占めている。小学校では桜本小が全在籍者中一3・1%と最も多く,中学校では桜本中で15・9%となっている。

(1998.6.10 民団新聞)



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